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202059日の当ブログ記事でも紹介した、Dアトキンソン氏の短期集中連載「このピンチが最後のチャンスだ」では、統計データの分析に基づき、日本が飛躍的経済成長を遂げるためには、中小企業の統廃合がカギになるという大変興味深い提案をしていた。同年612日発売のプレジデントで最終回を迎えたと思われるため、当連載の要旨と感想を述べたい。

 

【第一回】

    日本の生産性は世界第28位、先進国では最低クラスだが、足を引っ張っているのは中小企業だ。

    労働者数と生産性は非常に強い相関を示す。中小企業の生産性は、大企業の半分ほどしかない。

    日本では小規模事業者が全体の84.9%も占める。1社あたりの従業員数は僅か3.4人である。

    小規模事業者は、人的リソースに余裕が無いため、有給休暇の取得が難しい。同様に産休・育休を取りづらいため、女性を積極的に登用できない。

    売上が小さい小規模事業者は、研究開発や設備投資に回せる資金が少なく、イノベーションを生み出せない。

    小規模事業者の多くは、統計上、実効税率ゼロ。慢性的な赤字企業は、ただの寄生虫。

    小規模事業者に補助金を出して延命させる必要はない。消えてもらった方がいい。

 

【第二回】

    日本の人材評価は、人口の多い先進国の中で最高レベルにあるが、最低賃金は最低水準にとどまる。

    最低賃金を欧州並みに引き上げれば、モノやサービスがよく売れて、経済への直接的なプラス効果が期待できる。

    最低賃金と生産性の間には強い正の相関が見られる。因果関係の有無は結論が出ていないが、多くの国がまず最低賃金を上げることで生産性を高めようとしている。

    最低賃金の引き上げによって経営難に陥るような会社は退場してもらった方が日本のためだ。それこそが最低賃金を引き上げる狙いと言える。

    日本の企業数は約360万社ある。人口に対してこの企業数は明らかに多過ぎる。半分以下でいい。

    日本は現在、最低賃金を年率3%程度引き上げているが、私は年率5%引き上げても全く問題ないと見ている。

 

【第三回】

    2060年までに、アメリカは人口が25.2%増えて、日本を除くG714.9%増える。それに対して日本は32.1%減少するため、強いデフレ圧力にさらされる。

    人口増の時は不動産が不足してインフレになるが、しばらくすると不動産が増えてインフレ圧力が弱まる。一方、人口減の時は余った不動産がそのまま残り続けデフレ圧力をかけ続ける。

    「いいものを安く売っている」というのは日本人の妄想だと思う。あくまでも「値段の割に頑張っている」だけで、トップクラスの争いで勝てるかどうかは疑問だ。この妄想から抜け出せない限り、日本は本当に高付加価値のものを生み出せず、企業の生産性は低いままで、人口減の時代に成長することは不可能だ。

    日本には能力の低い経営者が多過ぎる。日本の企業数は約360万社。その気になれば誰でも社長になれる。お金や人といった経営資源は、上位の優秀な経営者の元に集めて活用させるべきだ。

    中小企業庁は、未だに中小企業に対し、税制や補助金などで手厚い優遇策を続けている。中小企業が規模を拡大したくなるように成長を促して、それが出来ない企業には補助しない。そうした政策に切り替えない限り、日本の未来は無いと思う。

 

1社あたりの従業員数は僅か3.4人」ということは、大半の中小企業は家族経営であり、実質的には雇用を生み出せていないと思われる。補助金ありきで自転車操業しているような会社は、社会のお荷物なので、廃業してもらった方が日本のためになると、僕も思う。中小企業には、誰もやりたがらないが誰かがやらないといけない仕事や、高度な固有技術を必要とするニッチな仕事の受け皿になって欲しい。大企業の下請けにすらなれない企業には存在価値が無いと思う。

ブラック企業として報道されるのは名の知れた大企業ばかりだが、ネットの書き込みなどを見ていると、本当のブラック企業は中小企業に数多く存在していると思う。実際に働いてみると、大企業は法令遵守の意識が非常に高く、何か問題が起こった時には労使一体となって速やかに対策を講じる、高い即応性と柔軟性があると実感する。大企業には従業員の労働環境や福利厚生を改善する経済的な余裕があり、社会的責任感が強く、自浄作用が働きやすい。一方、中小企業の多くは労働組合が結成されておらず、社長が圧倒的な権限を持っている。つまり社長がその気にならなければ労働環境は改善されない。僕の兄が勤めていた会社は、週休1日制で残業も多く有休も取れずという過酷な働き方を従業員に強いており、兄は数年後に身体を壊して入院してしまった。幸い命に別状は無く、数ヶ月の療養後に復職を果たし、今はその会社の元従業員が設立した新会社に移籍し、元気に働いているようだ。兄の健康を脅かした会社は今も存続している。創業間もないベンチャー企業に対する優遇は必要だと思うが、従業員の生活を担保にしないと業績を伸ばせないようなクソ会社は淘汰されるべきだと思う。

小中学校のクラスの平均人数は25人前後らしい。つまり2クラスあれば1人以上は社長になれる計算だ。よく、日本人は起業意欲が低いとか、日本人は起業家が少ないとか言われているが、なぜ企業数はこんなにも多いのだろうか。日本は他の先進諸国と比べて新興企業が生き延びやすい環境にあり、本来は廃業が妥当な企業が生き延びてしまっているのではないだろうか。2019年版中小企業白書によると、倒産件数は2009年以来10年連続で減少し、2018年は僅か8,235件に留まる一方で、経営者の高齢化や後継者不在のために休業・解散した企業数は増加傾向にあり、2018年は47,724件にのぼるそうだ。また企業数は年々減少傾向にあり、1999年比で2016年は26%減少しており、特に小規模事業者は数を減らしているそうだ。Dアトキンソン氏は、この流れを更に加速させるべきだと言いたいのだろう。僕も同感だ。

最低賃金と生産性の話は眉唾だが、最低賃金の引き上げが経済活性化につながるという主張は頷ける。賃金が低いから、安くしないとモノが売れなくなり、インフレにならない。とにかく安くモノを作ろうとするから、本当にいいものが作られなくなる。僕が勤めている会社で担当している製品も、先進諸国では思うように拡販できていない。市場価格よりも数割高いからだと言われるが、品質が認められているならば多少高くても売れるはずだし、本当に高い技術を持っているならば安く作ることもできるはずだ。ボリュームゾーンは世界の大手級に奪われ、要求仕様が特殊なものや、短納期のものや、リプレイス案件などを受注して売上を確保しているが、赤字経営からは脱却できていない。まずは自分達が井の中の蛙であることを認め、過大評価を止め、技術力を高める施策に全力を注ぐべきだと思うが、現実は研究開発費を打ち切るなど、全く逆方向に舵を切っている。将来が非常に不安だ。

日本では、大企業がやたらと目の敵にされ、大企業優遇政策は愚策のような扱いを受けがちだが、世界で戦える企業を育てるためには、むしろ大企業を優遇する必要があると思う。特に日本は人口の急減に伴う内需の激減が確実視されており、経済成長を続けるには海外市場に活路を見出すしかない。大企業に資本集中することは非常に理に適っていると思う。中小企業、特に小規模事業者には、日本が飛躍的発展を遂げるための踏み台になってもらうしかないだろう。

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