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愛読している経済誌「プレジデント」の主要連載陣の一人、佐藤優。元官僚であり、日本を代表するインテリジェンスの一人だ。一度、著作を読んでみたいと思っていたが、どれもこれも小難しそうで躊躇していたところ、本書に巡り合えた。僕はアラフォー世代であり、50代突入まで10年ほど猶予はあるが、将来に向けた心構えを築くために、本書を手に取ることとした。期待通り、全編通して非常に平易な文章で書かれており、大変読み易かった。以下では特に印象に残った記述を御紹介したい。

 

    夫のDVで酷い目に遭って離婚した女性がいて、その後に理想的な伴侶と巡りあい、再婚したとしましょう。離婚した時点ではDV夫との時間は最悪の経験ではあったものの、そのつらい経験があったからこそ素晴らしい伴侶を見極める目が養われ、結婚することができたとも考えられる。すると、辛かった過去は意味のある大切な時間へと変化するわけです。

 

    人との接点が途絶えると、途端に社会から孤立してしまったかのように感じます。そのまま定年後の生活を送るのはとてもつらいものです。そうならないために、同窓会で人脈を再構築すること。50歳を過ぎた頃から、同窓会のお誘いが頻繁に来るようになります。新たな人脈を作るより、かつての古い関係を掘り起こす方が遥かに効率的です。

 

    上司からのプレッシャーがきつい。言うことを聞かない部下がいる。窓際に追いやられている。つまらない仕事ばかりやらされる・・・・・・。それでも、50代は何とかして会社にしがみつくのがベターだと私はアドバイスしています。

 

    これまで全く携わったことのない分野の大きなプロジェクトを任されそうになったら?「今の自分には荷が重い。能力も十分でない」と率直に訴えることです。そして「失敗すれば会社にダメージを与えることになってしまう」と、あくまで会社や組織の視点に立って訴えましょう。

 

    時には家族や夫婦で外食をしたり、旅行やレジャーに出掛けたりする。これらは決してムダづかいではありません。家族の絆を強め、将来お互いに助け合う関係を作るための立派な投資なのです。

 

    相続にかかる相続税を抑えるために、「生前贈与」というやり方をすることもあります。贈与を受ける額が年間110万円までは非課税。ですから、分割して何年かに分けて贈与を受け取る方法もあります。

 

    今のグローバリゼーションの揺り戻しが来て、英語が話せる人材より自国の文化をよく理解している人、国語に強く自国語で様々な表現が出来る人の方が重要視されてくる可能性がある。ですから、まずは国語をしっかり勉強するべきです。あとは数学を学ぶことによって、論理的な思考を身に付けておく必要性は言うまでもありません。

 

    親の介護の問題を考え始めたら、まずはインターネットで、地元の地域包括支援センターの連絡先を調べ、電話をしてみましょう。老人ホームなどの介護施設探しも、親が元気なうちから始めておいた方がいいでしょう。

 

    日本では少し批判的なことを書くとすぐ感情的になり、侮辱の応酬が始まる。議論することでお互いに知性をブラッシュアップするという感覚がありません。これからの時代、日本人が教養レベルを上げるには、欧米並みのディベート文化や健全な批判精神を育むことが大切になってきます。

 

    人生の壁や転換点、逆境に直面した時、宗教書や哲学書を紐解くことで、救いを得られることがあります。仏教の考え方には、自分の行い次第で運命を変えられるという自力の精神がどこかにある。一方、キリスト教では、運命の全ては神に委ねるという他力の考え方です。その時の自分の状態や状況に応じて、相応しい考え方を選ぶのでもいいでしょう。

 

    仏教では、生まれてくること自体が苦しみです。人間は前世の悪行によって再びこの世に生まれてくるが、その悪行を断ち、輪廻の輪から外れて涅槃に入ることが解脱であり、真の救いである。仏教ではそう教えます。一方のキリスト教では、人間はいったん死んで魂も肉体も無くなるものの、イエス・キリストが再臨した時に選ばれた人だけが復活すると教えています。輪廻もあの世も無いというのがキリスト教なのです。

 

僕は同年代と比べて昇進が遅く、会社からの評価はあまり高くないと自覚している。出世レースで大きく後れを取っているのだから、身を粉にして働いても、見返りは期待できない。与えられた仕事をそつなくこなすことに集中し、目立った言動を控え、定時になったらそそくさと帰る。30代前半から、そんな働き方をしてきた。佐藤優氏は、50代になったら、そうしたマイペースな働き方にシフトすることを推奨しているが、若手のうちはバリバリ働く必要があると説いている。しかし先に期待が持てない状況下で、バリバリ働くモチベーションを維持するのは難しい。会社にいながらドロップアウトを選択するのも、一つの人生戦略だと思う。10年先20年先も、左遷されることなく今の職場に居座り続けることができれば、それは立派な勝ち組だと言えるだろう。

年齢を重ねるほど友人が貴重な存在になることは理解している。僕は進学・就職を機に友人関係をリセットしてしまったため、10年以上、友人と呼べる存在は一人もいない。年賀状やSNSでの繋がりも無い。プライベートで一緒に遊びに出掛けてくれる人は、父と母しかいない。普通に考えると両親の方が早く亡くなるだろう。大学生の頃から一人暮らしを続けているので、日常的に誰かと会話をしなくても、特に不満は感じない。しかし他愛ない会話ができる人が一人もいない状況に陥った時、ふとした弾みに寂しさに襲われそうで、空恐ろしい。本書では、50歳を過ぎたあたりから、同窓会の誘いが増えて、人脈再構築のチャンスがやって来ると述べられていた。現実的には、そこに一縷の望みを託すしかなさそうだ。

遺言書作成や生前贈与は、是非して欲しいと思っているが、70代の父親は、投資や節税について驚くほど興味が無く、また日常生活に支障を来たす持病は無く元気に暮らしているため、終活を匂わす提案は反発が予想され、説得には骨が折れそうだ。生前贈与については、本書読了後に調べ、以下の情報を得た。参考に記載する。「相続税よりも贈与税の方が税率は高い」「ただし年間110万円以下の生前贈与は非課税となる」「死亡前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象となる」「税務署に定期贈与とみなされた場合、贈与額の合計額に対して贈与税が課税される」「毎年、贈与契約書を作成し、金額と時期をずらせば、定期贈与とみなされにくい」

僕は独身なので親の介護のことを考えると気が滅入る。兄が一人いるが、兄も独身で、遠方で働いているため、地元で就職している僕に、介護の責が巡って来るのは自明である。理想はピンコロだが、介護問題とは高確率で向き合わなければならない。介護は遺産相続以上に話を切り出しづらいが、口火を切るのは子供の役目だと思う。理想的には、親が元気なうちに、一緒に地元の介護施設を見学したり、介護サービスの情報を集めて比較検討したりしたい。労働と介護の両立はハードルが高い。実際、毎週末片道4時間かけて実家に戻り、老親の介護に励んだ結果、瞬く間に体調を崩し、早期退職せざるを得なかった知人がいる。自分は同じ轍を踏まないようにしたい。今は新型コロナウイルスの影響で直接会う機会が激減しているが、感染が落ち着くと予想される来年あたり、旅行先などで、将来についてじっくり話し合いたいと思う。

ディベート文化が根付いている欧米人の中でも、特にフランス人は、自分の非を徹底的に認めないことで有名だ(参考)SNSや匿名掲示板で無配慮に攻撃的な書き込みを行い、反感を買うケースは、ドナルド・トランプ氏や橋下徹氏をはじめとした知識人にも多く見られる。教養の有無とはあまり関係が無いように思う。佐藤優氏によると、昔の日本人は今よりも教養レベルが高かったらしいが、昔の日本人は建設的な議論ばかりしていたのだろうか。僕は、インターネットの普及により、自分の考えを簡単に発信できる環境が出来てしまったために、生産性の無い愚痴や戯言が目につきやすくなっただけではないかと思う。

日本人は宗教に傾倒することを罪悪と感じている人が多いと思う。僕も同様で、寺社参拝を趣味としつつも、これまで宗教とは距離を置いてきた。仏教とキリスト教の違いもよく分からなかったが、基本的な考え方が異なることを知り、興味深く感じた。新しい見識に触れること自体が非常にワクワクする。個人的には、日本史、中国古典、日本神話は、じっくり学んでみたいと思っている。

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