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同期生から遅れること2年、ようやく社内昇格試験に合格し、年収が100万円ほどアップした。源泉徴収票を見た不動産投資会社から、「3室目のワンルームマンションを買わないか?」とセールスを受けた。不動産投資会社は、マンション投資をローリスクと評するが、本当だろうか?不動産投資会社は不動産を売ることが目的なので、自社商品の利点を強調し、リスクについてはあまり話そうとしない。そこで不動産投資のリスクについて、自分なりに考えてみることとした。

 

最も分かりやすいのは空室リスクだろう。今のところ家賃収入が滞ったことはないが、駅近で築浅のワンルームマンションなのだから、これは当然と言える。問題は2030年後だ。日本の人口は減り続け、30年後の2050年代には1億人を切ると予想されている。加えて、僕がマンションを買った街は、全国的に見ても人口の減少が著しく、居住者の奪い合いはますます激しくなるだろう。果たして2030年後も空室を回避できるだろうか?僕はそうは思わない。空室時は家賃の8割相当額が不動産投資会社から補償される契約だが、収支が悪化することは間違いない。どこかの段階で、不動産の売却あるいは買い替えを考えることになると思う。経年劣化によって資産価値は下落するだろうが、日本経済が僅かでも成長を続けていれば、不動産の市場価格も底上げされ、意外と売却損は出ないと思われる。僕は独身で、特に婚活もしておらず、今後も相続対策を検討する必要性は無いと考えられる。となると、居住用以外の不動産は全て手放し、現金(貯蓄)に変えた方が無難ではないかと思う。退職して年収が減少したら、不動産投資の旨味のひとつである節税効果がほとんど得られなくなり、ローン残債があれば、年間収支は確実にマイナスとなる。よって売却のタイミングは、退職時か退職の少し前が理想だ。

 

しかしマンション設備は経年劣化する。10年もすれば、エアコンや温水便座や給湯機器などの室内備え付け設備はダメになっていくだろう。加えて壁紙やフローリングの保修も必要となる。これは専有部なのでオーナーが全額負担することになる。調べたところ、10年で40万円は覚悟しなければならないようだ。更に専有部にある配管の交換目安は2025年で、費用は2530万円と、かなり高額になるそうだ。また15年もすれば大規模修繕が必要になる。現在、修繕費名目での積み立ては月額数千円程度であり、これで修理・交換費用を全て賄えるかは微妙なところだ。地震や風水害の影響で、想定よりも修繕費がかさみ、土壇場で金銭負担の追加を迫られるのではないかと危惧している。以上を考慮すると、専有部の配管交換目安に到達する前、すなわち築18年程度での売却が妥当と思われる。ただし、一般的には最も給与が高くなる50代前半での売却となるため、定年までの見込み年収、入居状況、修繕計画などを確認したうえで、売却の是非を判断することになりそうだ。

 

不動産投資会社からは、2室中1室を築1315年頃に売却する計画を示された。このあたりで不動産価値が住宅ローン残債を上回る、損益分岐点に達する見込みとのことだ。残り1室は自身の経済状況や社会情勢を見て、運用継続するか売却するかを判断してはどうか、と提案された。今後の年収はほぼ現状維持で推移する見通しと伝えたにもかかわらず、なぜ1室のみ売却という提案がなされたのか、よく分からない。節税対策を考えるならば、2室を運用したままの方が合理的と思われるのだが・・・。不動産投資会社は、聞かれれば答えるが、聞かれない限りは答えないスタンスで、信頼には足らない。しかもリスクは過小評価、リターンは過大評価している節があるため、言うことを妄信せず、各所から情報を収集し、吟味することが肝要だと思う。

 

人口減による空室リスク対策として、将来的には民泊又は高齢者住宅に転用を検討しているとのこと。確かに賃貸よりも需要は見込まれ、運営が軌道に乗れば賃貸経営よりも高いリターンが期待できそうだが、問題は不動産会社が民泊や高齢者住宅の運営ノウハウを持ち合わせていない点にある。質の高いサービスが提供できず、空室率が高まり、大損するリスクも高まると予想される。またビジネスホテル並の備品、すなわち寝具、カーテン、テレビ、ゴミ箱、ドライヤーなどを買い揃える必要があり、シャンプーなどのアメニティグッズ、タオル、トイレットペーパーなどの消耗品は都度補充する必要がある。加えて炊事環境も最低限整える必要があるため、調理器具、食器、冷蔵庫、電子レンジなども必要となり、少なくとも4050万円ほどの初期投資が必要と見る。内装のリフォーム工事も必要となれば、投資額は100万円を超える可能性もある。これではオーナーの過半数から承認を得ることは至難であるため、恐らく初期投資は管理会社と折半することになるだろうが、以後の買い替え費用は全額オーナー負担になるはずだ。賃貸経営と比べて、明らかにハイリスク・ハイリターンの投資となるため、個人的には参画したくない。不動産投資会社から転用の打診を受けたタイミングで、売却しても良さそうだ。

 

色々と考えた末、3室目の購入はお断りした。一般的に不動産投資は景気に左右されにくい手堅い投資だと評されているが、見積もりを取るまで売却価格が明確にならず、そもそも売りたい時に売れるとは限らず、他の投資よりも現金化に時間がかかり、出口戦略(利益確定又は損切り)を実行しづらいという難点があるし、損益通算の考え方も難解で、運用上の経費は透明性が低く、先行きを見通せないと感じる。それに住宅ローンという多額の負債を抱えることは単純に気持ちが悪い。やはり、比較的ローリスクで、そこそこのリターンが期待でき、運用実績が明瞭で、運用コストも低い、株式の投資信託が投資の王道だと思う。

 

これまでは余剰資金を居住用マンションの住宅ローン繰り上げ返済に充当していたが、ローン残高は当初の4分の1程度にまで減少し、繰り上げ返済による利息減額効果は小さくなったため、住宅ローン控除が受けられる残り3年間は、別の投資に充てたいと考えている。第一の候補は自社株式の定期購入増額だ。購入及び売却時の手数料は無料で、千円につき50円、5%相当の奨励金が必ず貰える。現在は給与天引きで千円、賞与天引きで2千円、年間16千円購入しているが、これを十倍程度に引き上げようかと考えている。第二の候補は自社以外の国内株式の取得だ。堅実に年間配当を獲得するため、成長分野に高シェアの商品やサービスを持つ、大手企業の株式を長期保有したいと考えている。第三の候補は海外株式の投資信託増額だ。米国や欧州、中国や新興国など、世界中のマーケットから有望株を探し出すのは、個人投資家には極めてハードルが高いため、プロのトレーダーに運用を任せた方が無難だと思う。既につみたてNISAを海外株式100%のファンドで運用し、確定拠出年金も海外株式中心で運用しているので、投資に回せるお金が増える、住宅ローン及び奨学金の完済、あるいは貯蓄型生命保険の支払い満了のタイミングで、増額を前向きに検討したいと考えている。

 

あと20年もすれば、定年という概念自体が無くなり、能力がある人は望む限り働き続けられる時代に変わっていると思うが、僕は60歳でスパっと会社を辞し、毎日が休日生活をのんびり楽しみたいと願っている。お金に困ることなく余生を過ごすために、60歳到達時点で、不動産を除く金融資産を5千万円以上貯めておきたい。現状では途方もない目標に思えるが、大きな怪我や病気に罹ることなく、現状と同程度の年収を稼ぎ続けることができれば、達成はそれほど難しくないはずだ。

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