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金融の専門家や投資でボロ儲けした人の話を目にする機会は数多くあれど、一般人の体験談を聞く機会は少ない。資産運用は最終的には自己責任で行うものだが、自分と似たような立場にある人達が、どのような考えで、どのような運用をしているのか気になるという人は結構いると思う。当記事では、自分が就職してから現在に至るまでに行った資産運用について振り返ることとした。資産運用について考える一助になれば幸いである。
新卒で入社してすぐ、会社から勧められるがままに行ったことは、給与天引きによる財形貯蓄と自社株購入である。僕は実家や社宅住まいではなく、賃貸マンションを借りて一人暮らしをしており、更に奨学金の返済もあって、家計に余裕が無かったため、財形貯蓄は月1万円、自社株購入は月千円とした。現在も同額で継続している。財形貯蓄は個人で行う定期預金と比べて利率が若干良いため、いつでも引き出せる安全資産としてポートフォリオに組み込むことはアリだと思う。自社株購入は購入金額に応じて会社から奨励金が支払われ、しかも手数料が1円もかからない。同期の中には、財形貯蓄は行わず、自社株購入に毎月数万円拠出している人もいたが、例えば数年以内に結婚を考えているなど、近い将来に纏まったお金が必要になる場合を除き、合理的な判断だと思う。
企業型確定拠出年金は、入社から数年間は元本保証の定期預金100%にしていたが、福利厚生の一環で開催された、外部講師による運用講座の受講をきっかけに、資産割合の変更に着手した。とりあえず定期預金は資産がほぼ増えないことが分かったため全て解約し、手数料が比較的少ないインデックスファンドを選び、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券が、おおよそ25%ずつとなるようにした。確定拠出年金は60歳まで続く超長期の積み立てなので、20代30代までは株式の割合をもっと増やしてもいいと思う。僕はこれまでに数回リバランスを行い、現在は国内株式と海外株式を計65%ほど、国内債券と海外債券を計35%ほどにし、少しずつ株式の割合を増やしている。40代半ば頃までは株式が7割前後となるように運用し、以降は景気動向を予想しながら、少しずつ元本保証の定期預金に振り替えていくつもりだ。僕は最近になって拠出掛金の積み増しを行ったが、確定拠出年金は運用益が非課税かつ掛金が全額所得控除となり、減税効果が大きいため、投資用の資金があるなら最優先で資金投入すべきだと思う。
銀行窓口で届出印の変更手続きを行った際、行員に勧められた年金型生命保険に加入した。僕が加入した保険は、毎月一定額を10年間支払い、10年間の運用期間を経て、毎月一定額を10年間かけて受け取る、というものであった。(注:現在は販売していない)年齢が若いほどリスクが低くなるため、受給終了が60歳前後になる保険であれば、手を出してもいいと思う。年末調整又は確定申告により生命保険料控除を受けられるが、控除上限額に達してしまうため、掛金は毎月5千円以下とし、余った資金は別の投資に用いた方がいいと思う。僕は深く考えず毎月1万円で契約してしまったが…。
30歳の時、職場近くに築浅の中古マンションを購入した。職務上、転勤の可能性が低い場合、月々の支払いはほぼ同額で、賃貸よりも数倍広い部屋に住まうことができるマイホーム購入は、経済的な選択肢だと言える。僕は全く下調べをせずに不動産屋を来訪した初日の内覧で購入を即決したが、本来は周辺地域の開発計画も調査したうえで購入を検討することが望ましいと思う。僕が購入したマンションは、もともと駅近の好立地物件だったが、購入後も宅地開発が進み、日用品が買えるお店や病院などがすぐ近くにできたため、資産価値は購入時よりも上がっている。止むを得ない事情によって売却することになったとしても、損をすることはないと思われる。不動産は非常に高い買い物なので、後悔することがないよう、優良物件に巡り合えるまで粘り強く情報収集した方がいいと思う。
預金がある程度貯まったら、住宅ローンの繰り上げ返済に充てている。居住用に不動産を取得すると、一定期間中はローンの残高に応じて住宅ローン控除が受けられるため、繰り上げ返済は控除期間終了後に行うべきだという意見も耳にするが、よほど低金利のローンを組んでいない限り、繰り上げ返済した方が節約できる。(注:手数料は考慮していない)繰り上げ返済よりも株式投資などに資金投入した方がハイリターンを期待できるという人もいるようだが、ノーリスクで確実にミドルリターンが得られる繰り上げ返済は、割の良い投資だと思う。僕は繰り上げ返済を積極的に行うと最初から決めていたため、固定金利よりも金利が低い変動金利でローンを組み、返済額軽減型よりも利息の軽減効果が大きい返済期間短縮型で繰り上げ返済を行っている。今のペースなら5年以内に完済できそうだ。
ローン完済後は預金が貯まりやすくなるため、一部を株式投資に回したいと考えている。海外企業は投資判断に必要な情報の収集が困難と思われるため、国内株式を中心に購入するつもりだ。株主優待目当てで選んでいる人も多いようだが、有効期限内に使い切れない恐れがあるため、僕は配当金を重視して決めたいと考えている。50万円程度の投資資金が確保できたら、安定成長が見込めそうな企業や将来性が感じられる企業の株式を都度購入し、基本的には長期保有する方針で運用したいと思う。
街中でキャッチセールスに引っ掛かり、投資用にマンションのワンルームを2室購入した。この買い物は正直失敗だったかなと思っている。不動産投資の最大の魅力は、契約時に住宅ローン残高が死後ゼロとなる保険に加入しておけば、不動産を相続した遺族が、(年金型生命保険ほどの確実性は無いが)継続的に家賃収入を期待できる点だと思うが、生涯独身を貫く可能性が高い僕にとっては無価値である。不動産投資を勧誘するウェブサイトの多くが、家賃収入による増収を謳っているが、家賃収入がローン返済額を多少上回っていたとしても、固定資産税・都市計画税を毎年支払わなければならないため、年間収支が黒字になることは、ほぼほぼ無いと思われる。更に1年目は登記費用、2年目は固定資産取得税を支払わなければならないため、大赤字は不可避である。不動産投資が赤字となった場合、確定申告で損益通算を行うと課税対象となる所得を減らせるが、その節税額は固定資産税・都市計画税すら賄うことができておらず、年間10万円弱の赤字が続いている。将来的には空室発生による家賃収入減額のリスクもある。不動産投資は、超長期にわたる少額投資の末、年季の入った不動産を割安で取得でき、老後の年金の足しにできるものだと認識した方がいい。
つみたてNISA制度を利用して、年間40万円の投資信託を始めている。先述した通り、住宅ローン完済後は国内株式投資に挑戦するつもりでいるため、海外株式100%のファンドを選び、投資先を分散させた。期間満了までは利益確定せずに放置し、期間終了後も積み立てを継続するつもりだ。定年(退職)が近付いたら、相場や家計状況を踏まえて、必要に応じて取り崩しや積み立ての中止を検討したい。
金・プラチナをはじめとする貴金属への投資は今のところ予定していない。同じ実物資産の一種である不動産に対して、やや分不相応と思われるほどの投資を既に行っているため、これからは金融資産を重点的に増やしていきたいと考えている。ただし金融資産総額が現物資産総額を上回ったら、リスクヘッジ目的で、実物資産への追加投資を考えるかもしれない。その時は、比較的少額で気軽に始められ、売買手続きも簡便な貴金属投資は、有力な選択肢となるだろう。
仮想通貨をはじめとする投機には、手を出すつもりはない。僕は本質的に優柔不断かつ面倒臭がりであると自覚しているため、相場チャートを頻繁にチェックし短期間で売買するスタンスは、性格的に合わないと思っている。似たような理由で、信用取引も向いていないと思う。一度手を出してしまうと、深みにはまってしまいそうで怖い。投資計画はライフプランだけでなく、自分の性格も踏まえて検討した方が、無理なく続けられると思う。
そう遠くない未来、定年が原則70歳に引き上げとなる可能性が高いと言われているが、僕は金融資産が退職金抜きで5千万円以上確保できる見通しが得られれば、60歳で退職してもいいと考えている。仕事を辞めると、ボケが一気に進行する懸念があるため、フィットネスクラブに通い定期的に身体を動かす、旅行や読書や美術品鑑賞などの趣味に没頭し、経験談を文章に纏めてブログなどで公開する、マンションの管理組合役員などのボランティア活動に参加する、行きつけの居酒屋やスナックを見つけ誰かと会話を楽しめる環境をつくる等、適度に刺激的な生活を送りたいと考えている。豊かなセカンドライフを迎えるためにも、本業と財テクに勤しみ、資産の形成に努めていきたい。
