10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
本書は、いすゞ自動車OBの佐藤CVS(Certified Value Specialist)をはじめとしたVE界のレジェンド達による共著である。VEやテアダウンの実践における注意点を実例を交えた解説や、グローバル・スタンダードになりつつあるが日本では馴染みが薄いFASTの概要が図表付きで掲載されており、優れたVEの解説書と言える。また、現役の技術者・管理者に対する厳しい記述が随所に見られるため、自己啓発書としても有用と思われる。
本書を読んで、特に印象深かった記述は以下の4点である。
①価格ネゴによりコストを下げることは原価低減とは言わない。取引先がもともと下げ代を踏まえて見積もりを出してきているだけの話である。
尤もな話だとは思う。価格ネゴの時間を他の付加価値が高い業務(生産、開発など)に割り当てた方が有意義だと言いたいのだろう。だが価格ネゴの大変さは評価して欲しい。
僕が勤めている会社では、相見積もりと仕様精査による値下げ交渉が必須となっており、スタッフはこれにかなりの時間を費やしている。例えば、最初は5000万円の見積もりを呈示されたが、数十時間に及ぶ価格ネゴにより最終的には4000万円で発注できたとする。数十時間で1000万円の支出を削減できたわけだから、有益な活動だと思うが、この成果に関して会社が評価することは一切ない。そうすることが当たり前と言われる。当然スタッフの意欲は削がれ「予算内であれば別にいいや」という気持ちになり、商社と結託して価格ネゴを頑張った風に見せたり、多少高く感じてもそのまま発注するようになる。他にも設備補修費や開発費などは、毎年のように予算圧縮を要請されるが、どれだけ支出を抑えても、やはり評価の対象にはならない。支出抑制活動も経営改善に少なからず寄与しているのだから、相応の評価をして欲しい。
②優れたVEの成功事例を展示室に飾り、その成果を讃えてはどうか。VEを実践して成功を収めることが経営トップや幹部になる登竜門とするべきである。
僕の勤めている会社では、改善良好事例の展示会が毎年開催されるが、はっきり言って時間の無駄だと思う。担当者は展示物の制作のために何十時間も没頭することになるが、会場に訪れるのは、ほんの一握りの社員だけである。時間に見合うだけの価値があるとは思えない。経営トップや幹部の見栄や自己満足のために開催しているように思える。価格ネゴの方がよっぽど実益があり、有意義だ。
③VE提案発表会で大々的に発表されたテーマが実施されないケースがよくある。発表会はセレモニーではない。発表会をVE提案実施のスタートと考えることが何よりも重要だ。定期的にフォローアップし、刈り取りを確実に進めなければならない。実施の支援を強化するために、フォローアップの専任を置くというのもひとつの手である。
威勢のよい計画を立てても実行が伴わないことは日常茶飯事だ。関係者は皆「無理だ」と思っている内容でも、発表するように言われたから仕方なく登壇することも多い。成果を収めてから、活動内容をフォーマットに記入し、定められたプロセスに沿って活動したように見せることも多い。そのような発表を聴講することに、どれほどの価値があるのだろうか。発表会はセレモニーでしかない。時間の無駄だ。製造現場に足を運ぶ方が、遥かに有益な知見が得られるだろう。
④顧客のニーズに沿った「言いなり受注」ではなく、他社にはない新機軸を提案する「おススメ販売」を展開していくとよい。こういう仕様があれば、こういう市場で売れると、推論や夢で商品の種類を増やしてはいけない。種類が多いと安心するだけである。
新製品を量産するためには、多額の開発費が必要となり、金型や治具、場合によっては新設備も必要となる。売り込むための広告宣伝費も馬鹿にならない。ほとんど売れない商品であっても、購入者のためのアフターサービスは継続しなければならない。つまり下手に製品化すると次世代に負の遺産を残すことになる。投資に見合うリターン(売り上げ、あるいは利益)が望めなければ製品化するべきではない。設計や営業には販売方針を見直すように何度も督促しているが、全く改める気がないように思える。
一度使ったきり、20年以上、倉庫で眠り続けている金型が結構ある。金型廃却には設計との合意が必要という社内ルールがあるため、設計に廃却を打診するのだが、「納品した製品が壊れた時、この金型が無いと、すぐに交換品を製作できなくなる」という納得しがたい主張を繰り返し、決してOKを出さない。旧型品が壊れたら現行品もしくは新型品を売り込めば良い。なぜそのように考えられないのか、僕には理解できない。現場は金型で溢れかえり、かわし作業が頻繁に発生し、生産に支障をきたすようになったため、稀頻度製品の金型は倉庫を借りて保管している。保管料は年間100万円に及ぶ。これは明らかにムダだと思うのだが、社内では問題視されていない。