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業界の主要プレイヤーの勢力関係を図式的に把握できる良書。3年連続で購入。各業界の市場成長度を天気に例えて表現していて、事業規模が異なる業界間の比較も行える。当記事では、個人的に注目している業界をピックアップしてコメントする。

 

2020年版の記事はこちら

 

2021年版の記事はこちら

 

 

(1) 脱炭素・・・22年度予想:晴れ

世界の一大トレンドになることは間違いないだろう。主役は「岩谷産業」だと思うが、期待先行の爆上げで、もはや手の届かない領域に達してしまったため、僕は低単価かつ長期視点だと未だ底値圏にあると思われる「ENEOSホールディングス」を購入。高配当なので長期保有にも適している。

 

(2) DX・・・22年度予想:快晴

中期的には市場規模は右肩上がりに伸びていくと予想されているが、日本の中小企業にDXを導入する投資余力があるとは思えない。またプレイヤーが多過ぎて、現時点で投資先を絞るのは、かなりの博打だと思う。僕は上場初期のバブリーな値動きに目を引かれた「Speee」を監視銘柄に入れている。

 

(3) 5G・・・22年度予想:快晴

昨年の記事では、5G基地局の主力工事業者である「協和エクシオ」と「コムシスHD」を紹介した。相変わらず2社は似たような株価チャートを描き、単価も配当利回りも同じくらいだ。僕は「協和エクシオ」を保有している。

 

(4) 先端技術材料・・・22年度予想:快晴

化学業界は日本の希望の星だ。現在は「東レ」「三菱ケミカルHD」を保有。「住友化学」「旭化成」「AGC」「富士フィルムHD」「クラレ」「カネカ」「三菱ガス化学」などを監視銘柄に入れて、押し目買いを狙っているが、なかなか注文が成約せず、ヤキモキしている。特に「三菱ケミカルHD」「住友化学」「旭化成」は会社の規模が比較的大きく、また事業多角化により経営が安定しているので、安心感がある。「クラレ」は同業界の中では配当利回りが傑出して良いため、定期預金間隔で長期保有してもよさそうだ。

 

(5) 副業・学び直し・・・22年度予想:晴れ

恥ずかしながら「ZHD」が副業マッチングサービスに参入したことを本書で初めて知った。抜群の知名度を誇るため、ロースキル業務の仲介サービスにおいて、覇権を握るポテンシャルがあると思う。将来性を感じるのは、ハイスキル業務の仲介サービスだと思う。僕は「ビザスク」に注目している。昨年はリターン・リバーサル戦略がドはまりし、しっかり稼がせてもらった。単価が比較的高いため、買いたいタイミングでなかなか手を出せないのが、口惜しい。

 

(6) ペット・・・22年度予想:晴れ

ペット保険の「アニコムHD」はユニークで面白いと思う。日本のペット保険加入率は欧米諸国の半分にも満たない。日本最大のブリーダーマッチングサイトを活用した知名度向上と営業強化によって契約数が伸長していけば、更なる成長が期待できそうだ。

 

(7) 工作機械・・・22年度予想:晴れ

本書で注目の会社と紹介されていた、旋盤大手の「ツガミ」が気になる。積極果敢な設備投資を仕掛けており、21年度には中国とインドで新工場の竣工・稼働を計画。アフターコロナの追い風もあって、22年度以降の業績貢献が大いに期待される。

 

(8) AI・・・22年度予想:晴れ

小型有望株の宝庫。国内市場規模は21年が推定2,000億円だが24年には推定4,000億円に成長する模様。宝くじ感覚で、少なくとも数年は様子を見るべきだろう。これまでに「PKSHA Technology」「HEROZ」「エーアイ」「FRONTEO」などを売買している。2倍に膨らんだ銘柄もあるが、半分に萎んだ銘柄もある。

 

(9) 半導体製造装置・・・22年度予想:晴れ

(10) 半導体材料・・・22年度予想:晴れ

どちらも半導体需要に左右される業界。しばらくは好調が継続する模様。半導体製造装置企業は値嵩株が多く、資金不足の個人投資家は手を出しにくい。「三菱ケミカルHD」を保有。「SUMCO」「住友化学」「富士フィルムHD」「AGC」を監視中。

 

(11) eコマース(EC)・・・22年度予想:晴れ

僕がネット通販で最も利用しているのが「ZHD」運営のYahoo!ショッピングとPayPayモールだ。20年の売上高は「楽天」を抜き、国内2位の座を奪取した。LINEショックは素晴らしいバーゲンセールだった。本業が好調なのだから株価が下がったまま放置されるわけがないのだ。来年以降、ウィズコロナの巣ごもり需要が剥落しても、EC市場の成長は止まらないだろう。近い将来、4桁の大台に乗ることを期待したい。有望なベンチャー企業も続々と誕生している。短期では「エニグモ」の売買実績がある。またマーケティング支援事業で成長中の「フィードフォースG」「オーケストラHD」の売買実績がある。

 

(12) テレワーク・・・22年度予想:晴れ

「アセンテック」「Chatwork」をバブル相場で高値掴み。下落局面で買い増しを繰り返した結果、投資余力が小さくなったため、21年度は20年度のように売却益で儲けることができなくなった。評価損益を見ていると落胆を抑えられないが、損切りは絶対にやらない。まだまだ成長が期待される市場。必ず値を戻すと信じている。「アセンテック」の主力製品であるVDIは、シンクライアントと組み合わせることで、低コストと高セキュリティを実現できるという優位性がある。ユーザー数が多い大企業で採用が進むかが成長のカギになると見る。「Chatwork」は中小企業向けのチャットツールなので、馴染みは薄いが、導入企業数は順調に伸びている模様。収益改善のため、料金プランの値上げにも踏み切った。更なる躍進に期待したい。

 

(13) サイバーセキュリティ・・・22年度予想:晴れ

「ソースネクスト」を保有。セキュリティ対策ソフトではなく、自動通訳機ポケトークの将来性に期待して購入。外国人観光客をメインターゲットとした観光案内所や宿泊施設や飲食店、あるいは英会話学習を目的とした個人に選ばれるかどうかが、ポイントになるだろう。会議室用WEBカメラ「ミーティングオウル」や空気清浄機「モレキュル」など時代に即した新商品を販売したり、株主優待制度を新設したりするなど、積極性や柔軟性が感じられる点もよい。

 

(14) クラウド・・・22年度予想:快晴

最注目は「NTTデータ」だ。世界2強のアマゾン&マイクロソフトと、親密な関係を築けている点は大きい。僕は値動きが小さく面白みに欠けたため早々に手放してしまったが、これからも順調に業績を伸ばしていくと思う。昨年は「日本電信電話」による「NTTドコモ」の完全子会社化が話題となったが、次の子会社化候補は「NTTデータ」ではないかと密かに思っている。

 

(15) 塗料・・・22年度予想:晴れ

あまり関心を持っていなかったが、世界市場規模が今後10年で約6割増える見通しとのこと。競争が激しく、日本企業が勝てるかどうかは未知数だが、市場規模拡大に合わせて売上を伸ばして行くとすれば、株価は堅調に増えていきそうだ。投資先の有力候補は「日本ペイントHD」「関西ペイント」だが、どちらも配当利回りが非常に少ない点が気にかかる。

 

(16) リース・・・22年度予想:薄曇り

昨年、高配当銘柄の業界首位「オリックス」を超割安で買えたのに、早々に売却してしまったのは痛恨の極み。高値で買い直すのは癪に障るため、代わりに購入したのが業界2位の「三菱HCキャピタル」。低単価で配当利回りも上々なので、時価評価額が取得平均を下回ったら、優先的に買い増しを検討したい。

 

(17) 酒類・・・22年度予想:曇り

国内の酒類消費量はジリ下げ基調と聞くが、大手各社は海外への販路拡大や、ノンアルコール飲料及び低アルコール飲料の開発といった布石を打っているため、あまり心配していない。昨年は「アサヒグループHD」を売買したが、すっかりコロナ前の水準に戻してしまったため、現在は「キリンHD」の購入を検討中。「アサヒグループHD」とは異なり、海外事業がむしろ足を引っ張っている点は、懸念事項だ。

 

(18) 漁業・水産・・・22年度予想:曇り

特定保健用食品「イマークS」を2013年から愛飲していることから縁を感じ「日本水産」を保有。缶詰・冷凍食品といった時短・簡便食品を数多くラインナップしていること、水産加工物は健康志向食品としてますます売上を伸ばしていく可能性を感じること、海外売上比率が3割程度と、大手食品メーカーの中では高めであることから、今後も安定した業績を残せると期待している。僕は、過去5年間の株価チャートが下落トレンドの銘柄と、最近になって株価が急騰している銘柄は、下落リスクが高いと判断して、なるべく買わないようにしている。「日本水産」はこの条件に当てはまらず、コロナショック後の値戻しが他銘柄と比べて遅かったため、幸運にも過去5年間の底値付近で購入することができた。

 

(19) 広告・ネット広告・・・22年度予想:薄曇り

昨年から「ZHD」傘下の「バリューコマース」に注目。今年に入って一旦は購入したが、薄利で利確してしまった。30003500/株あたりで長らく燻っていたが、遂に上放れし、遠い存在になってしまった。大手企業の庇護のもと、売上・利益共に順調に伸びている会社は強い。本書を読んで「電通グループ」傘下の「カルタHD」を監視銘柄に追加した。

 

(20) 出版・書店・・・22年度予想:雨

2020年の電子書籍売上は前年比28%増。まだまだ伸びると思う。昨年から監視を続けていた「ZHD」傘下の「イーブックイニシアティブジャパン」は2500/株前後を右往左往していたが、ようやく上へ突き抜けた。出遅れ感がある「インフォコム」を監視銘柄に追加。

 

(21) イベント・・・22年度予想:曇り

初めて売買益を得た銘柄「TOW」は思い入れが強い。一度は売却したが、コロナ禍でも利益を確保する営業力の強さと、配当利回りの良さに惹かれ、再購入。現在は株主優待が貰える1000株を保有。20年は市場規模が前年比半減の厳冬期となり、21年度も見通しは暗いが、間違いなく今が底であり、ウィズコロナ時代にシフトすれば、業績は一気に回復すると信じている。株価が平均購入単価よりも下がることがあれば、前向きに買い増しを検討したい。

 

(22) 不動産・・・22年度予想:晴れ

昨年12月から『会社四季報プロ厳選500』の定期購読を開始。21年新春号に掲載されていた「日本エスコン」を購入。株価に割高感が無く、過去5年の株価チャートを見ても天井圏にあるとは思えず、低単価で売買しやすく、何より配当利回りが優れていることに魅力を感じた。購入後、中部電力の連結子会社となって投資資金を調達し、プロ野球『日本ハムファイターズ』新球場のネーミングライツを取得、北海道エリアに本格参入を果たした。大胆な投資が今のところ結実している印象。大化けに期待したい。

 

(23) 陸運・物流・・・22年度予想:薄曇り

宅配便事業はまだまだ伸び代が豊富にある。投資先は最大手の「ヤマトHD」が鉄板だろう。宅配は週2回を超えるペースで利用しているが、体感8割が「ヤマトHD」の取り扱いだ。

 

(24) 倉庫・物流施設・・・22年度予想:薄曇り

こちらもEC拡大の恩恵を受けて、まだまだ伸びる余地が大きいと思う。多数の中小規模業者が乱立しているが、最もニーズがあるのは最新設備を取り揃えた大型物流施設であり、そのような施設をつくることができるのは、資金面で優位に立つ大手企業ではないだろうか。個別銘柄投資の開始初期から「三井倉庫HD」を監視しているが、J-REITの「大和ハウスリート」「三井不動産ロジスティクスパーク」「三菱地所物流リート」あたりでもよさそうだ。いずれも長期アゲアゲ相場。入りどころが難しい。

 

(25) ドラッグストア・・・22年度予想:晴れ

群雄割拠のドラッグストア業界は、数年前からビジネス誌などでもさかんに取り上げられている。戦況の激しさは、かつてのコンビニ業界を彷彿させる。今後ますます再編が進み、トップクラス数社の寡占状態に落ち着くのではないかと推測する。僕は10年以上前から普段使いしている縁で、「ウエルシアHD」を監視している。きっとドラッグストア業界で覇権を握るだろう。

 

(26) 総合商社・・・22年度予想:晴れ

大手総合商社には、日本の文系エリートが結集していて、どんな過酷な状況下でも、乗り越えられる強かさがあると思う。どこを買ってもハズレはなさそうだったが、とりわけ単価が安い「双日」を購入。10月に株式併合され、買い増しがやりづらくなるのは、個人的には残念に思う。

 

(27) 専門商社・・・22年度予想:曇り

本書によると、利幅は薄いが業績は安定した企業が多いとのこと。最近「菱洋エレクトロ」を購入。昨年は頻繁に取引を行い、キャピタルゲインでコツコツ稼いだが、昨年の秋から今年の春にかけて、下落中のAI関連銘柄に手を出し、含み損を膨らませるトレードを繰り返したため、反省の意味を込めて、割安放置株や高配当銘柄を中心に購入を進める戦略に転換。確定利益は前年に遠く及ばず、物足りないが、我慢、我慢。

 

(28) リユース(中古)・・・22年度予想:晴れ

特に「テイツー」経営の古本市場と「まんだらけ」経営のまんだらけには、学生時代から足繁く通い、思い入れが深い。最近は電子書籍の購入割合が高まっているが、今でも年間100冊ほどは古本コミックを購入している。1年以上の継続保有で優待利回りが跳ね上がる「まんだらけ」を購入。来年からは優待利回りが10%を超える。素晴らしいファンサービスだと思う。

 

(29) 家電量販店・・・22年度予想:薄曇り

家電量販店は断然ヨドバシ派だが、非上場企業なので、近所に店舗があり、配当と優待の利回りが共に優れている「エディオン」を監視銘柄に入れている。できれば1000/株以下で買いたいところだ。中間配当権利確定日が迫り、かつ自民党総裁選挙前で地合いが良い割に、株価は伸びていないため、10月中に一段安となる可能性が高いと見る。参入時期を慎重に見極めたい。

 

(30) アウトドア用品・・・22年度予想:晴れ

ブランドの強さを考えると「ゴールドウイン」の安定性は頭一つ抜けていると思う。「ワークマン」は人気も成長性も抜群だが、過熱感がある。「スノーピーク」も期待先行で急騰している印象で、ナイアガラが怖い。アウトドア趣味は、初期投資額はかなり大きいが、健康にも良く、非日常感も味わえ、年齢や性別に関係なく楽しめるため、今後も愛好者は増えていくと思う。

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定期購読している経済誌プレジデント。本号はマイブームの株式投資を特集しており、大変興味深く読み進めることができた。本書で興味を持ち、個人的監視銘柄に加えたものは以下の通りだ。

 

コムチュア(東証3844)

中長期的に成長が見込まれる10銘柄のひとつとして紹介されていた。クラウド、ビッグデータ、AIRPAなど、これからの大本命と目されるビジネスを展開。同特集で取り上げられていたNTTデータ(東証9613)と共に、前日比微減の指値で約定を繰り返し狙ったが悉く失敗し、押し目買いは叶わず。ほぼビフォーコロナの株価に戻していることと、単価の高さを踏まえると、これから買うならNTTデータ(東証9613)の方がお買い得だと思う。

 

ジャパンインベストメントアドバイザー(東証7172)

日本証券新聞デジタル版の購読権利に興味がある。効率良く賢く投資を行うためには専門性が高い情報源を確保すべきだと思う。9月に入ってから株価が少しずつ上向き、2割近く上がっている。ネット評では、未だ割安水準にあり、お買い得との意見が大勢だ。押し目チャンスに投資予算があれば購入したいところだ。

 

クリエイト・レストランツ・ホールディングス(東証3387)

優待利回りが優秀。行きつけの居酒屋が優待食事券の対象店舗になっているため、使用期限切れでムダにする可能性は低そう。Go to キャンペーン事業の影響か、外食産業銘柄は概ね微増傾向にあり、こちらも例外ではない。できれば600/株以下で買いたいところ。次の権利確定が2月なので、それまでに購入できればいいと思う。

 

DDホールディングス(東証3073)

優待食事券の利回りはクリエイト・レストランツ・ホールディングスを上回る。行きつけではないが、来訪経験がある居酒屋がいくつかラインナップされており使い勝手は悪く無さそう。できれば700/株以下で買いたい。こちらも権利確定が2月なので、焦らず購入チャンスを見定めたい。

 

株主優待は日常的に使える機会があるかが非常に重要だと思う。無理矢理使おうとしないと消費できない優待に、僕はあまり価値を見出せない。例えば、食事券が貰える銘柄では、すかいらーくホールディングス(東証3197)とコロワイド(東証7616)が特に有名だが、僕は系列店舗で食事をする機会がほぼ無いため、これらの優待に魅力を感じない。近所にお店があるかどうかではなく、そこで買い物をする習慣が既にあるかどうかで、銘柄を選ぶべきだと思う。

 

他には「日経マネー」と「ダイヤモンド・ザイ」の予測精度を検証した特集記事が目を引いた。誌面でプッシュされていた銘柄が、421日の終値から721日までの間に、どれだけ騰落したか調査し、優劣を下す企画だ。この間、TOPIX11.8%上昇しているが、この上昇率を上回った銘柄は、「日経マネー」が31銘柄中18銘柄(58%)、「ダイヤモンド・ザイ」が31銘柄中17銘柄(55%)となり、ほぼ互角であった。月間マネー誌は銘柄選びの参考になることが、データで明快に示され、大変興味深かった。

 

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母親から英才教育を施され、子供の頃からの巨人ファンだが、この手の本を購入するのは初めてだ。巨人ファン目線で書かれた本は、松井登場以前の古き良き巨人軍をやたらと懐古・礼賛しているという先入観があり、往時を知らないアラフォーの自分では楽しめないと思っていた。しかし本書は9010年代、とりわけ現役の選手や監督・コーチを中心に取り上げており、共感できる記述も数多く、思いのほか楽しめた。僕は巨人の話が出来る知り合いが母親しかいない。同様に、巨人ファン仲間に恵まれていない人にとって、このような書籍は大変貴重だと思う。3040代の孤独な巨人ファンには、特に推薦したい。

 

金にモノを言わせてFAで四番バッターを強奪しまくった長嶋時代は、個人的には結構好きだった。明るいキャラクターの長嶋さんは観ていて面白かったし、松井のような生え抜きのスターも活躍していたし、何より圧倒的な打力で相手チームをねじ伏せる強さは魅力的だった。跡を継いだ原さんは、1年目に優勝&日本一という最高の結果を残した。しかし2年目に3位となった責任を取る形で、まさかの監督交代。巨人ファンは誰も望んでいなかったと思う。巨人フロントのパワハラ体質を目の当たりにし、巨人に対する愛着が薄れたのは間違いない。堀内監督を応援する気にはなれず、「さっさと原に戻せ」と思っていた。原監督が再登板した時は本当に嬉しかった。堀内監督の2年間は暗黒時代というのが世間の評価だと思うし、僕も同感だが、著者は「堀内時代があったからこそ、若手の阿部や内海が奮起し、今の巨人がある」と、一定の評価を与えている。個人的には賛同しかねるが、面白い見方だと思う。また、FA補強組が生え抜きの期待の若手を自主トレに連れて指導したり、引退後にスタッフとしてチームを支えたりしているという事実から、FA制度を前向きに評価している点も、僕には無かった視点で、興味深かった。

 

阿部二軍監督の「今の子は自己評価が高い。謙虚さゼロです」というコメントが紹介されていたが、全くその通りだと思う。確かに今のプロスポーツ選手はビッグマウスが多いと感じる。阿部と同世代のおっさんの感覚だと、有言実行は滅茶苦茶格好良いが、できなければひたすら格好が悪い。ゆえに自分では出来ると信じていても口に出すのは憚られる。しかし今の若い子達には、「大口を叩いて出来なかったら恥ずかしい」という感情はあまり感じられない。むしろ宣言することで自分を鼓舞しているように見える。度胸が据わっていると思う。

 

野球中継で「巨人阪神伝統の一戦」というフレーズを良く耳にするが、実感は湧かない。正直なところ、阪神戦に特別な思い入れはない。通算対戦成績は巨人が大きく勝ち越しているし、最近も巨人の勝ち越しが8年間も続いているので、宿命のライバルみたいに言われると、戸惑ってしまう。阪神ファンが一方的に突っかかっているだけだと思う。同じように感じている巨人ファンは結構多いのではなかろうか。このあたり、著者にはもっと踏み込んで解説して欲しかった。

 

「清武の乱が世間に支持されなかったのは、巨人ファンの悲願だった江川監督誕生を阻止したから」という意見には、全く同意できない。僕は江川の現役時代を知らない。江川と言えば、やたら理屈っぽくてどことなく偉そうな解説だが、現役の首脳陣や選手達を批判しているように聞こえて、あまり好きではなかった。自分が正論を言っていると信じて疑わず、正論を言い続けることが常に正しいと思っているように見えた。あれでは反発する選手も多いだろうと思っていた。またセオリー重視で意外性に欠ける野球が重んじられるようになり、面白い野球が観られなくなるのではないかという懸念もあった。要するに江川には監督の器は無いと考えていた。よって江川の現場復帰が見送られることになり、個人的には「清武グッジョブ!」と思ったし、むしろ清武を更迭したナベツネに対する憤りが募った。育成派の清武が去り、FA補強派のナベツネが居座るという、旧態依然のパワハラ組織を見せつけられ、巨人の先行きに不安を感じた。しかし清武の自己犠牲を厭わぬ奮闘により、原監督が続投したことで、巨人は好成績をキープすることができた。清武は巨人にとって恩人だと思う。近年は清武が推進していた育成にも力を入れ始め、若く才能ある選手が躍動するようになった。清武は今の巨人の礎を築いた一人だと、僕は評価している。

 

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業界の主要プレイヤーの勢力関係を図式的に把握できる良書。昨年に引き続き購入。各業界の市場成長度を天気に例えて表現していて、事業規模が異なる業界間の比較も行える。当記事では、個人的に注目している業界をピックアップしてコメントする。

 

2020年版の記事はこちら

 

(1) 5G・・・21年度予想:晴れ

本書では取り上げられていなかったが、別書籍では5G基地局の工事業者は、中長期的な成長が期待できると紹介されていた。具体的には、「協和エクシオ」と「コムシスHD」に着目している。2社の売上規模は同程度、株価も同じくらいで、ここ1年の株価チャートも瓜二つ。まるで双子のようだ。

 

(2) テレワーク・・・21年度予想:晴れ

新型コロナウイルスの猛威を受け、弊社でも在宅勤務制度の利用が急速に拡大した。中心プレイヤーは米国企業になるだろうが、パートナー契約を勝ち取った日本企業にも成長の芽はあると思う。関連企業の中では、「アセンテック」の業績が堅調で、株価も順調に伸びているように思う。

 

(3) オンライン医療・・・21年度予想:薄曇り

2020年版で既に大化け業界と目されていたが、新型コロナウイルスによって特需が生まれ、一気に注目業界へと出世した。しかし現場至上主義が根付く日本において、市場が順調に成長していくとは限らない。個人的には「メドレー」が気になってはいるが、長期ホールドはリスクが大きいと思う。

 

(4) AI・・・21年度予想:快晴

これからの大本命業界その1。日本にも将来有望な企業が揃っている。経営的にも優秀な企業が多い。営業利益率2桁は当たり前、3割超えも珍しくない。僕は20208月に「エーアイ」の株を100株購入し、僅か半月ほどで6万円近く稼がせてもらった。今後もAI業界の銘柄は複数保有したいと考えている。

 

(5) 先端技術材料・・・21年度予想:快晴

これらかの大本命業界その2。日本勢が世界に冠たる業界のひとつであり、中長期的に高需要が見込まれる。当業界からは、これまでに「東レ」「旭化成」「AGC」の株式を取得しており、他にも「クラレ」「住友化学」など、気になる企業はたくさんある。予算的に手広く投資できないことが口惜しい。

 

(6) スキルシェア・・・21年度予想:快晴

数多くのプレイヤーが集結。AI業界以上に、どこが勝ち組になるか、見通せない。業績好調な企業を中心に短期売買で儲ける方が確実かつ低リスクだと思う。僕は「ランサーズ」の短期売買で利益を得たが、主婦向けに特化した「うるる」や、スポットコンサル市場を創出した「ビザスク」など、アピールポイントが明確な先駆的企業が、今後も伸びていきそうな気がする。

 

(7) サイバーセキュリティー・・・21年度予想:晴れ

当業界が縮小していく未来は想像できない。中長期的に「トレンドマイクロ」は安泰だと思う。既に高シェアと十分な知名度を獲得しているし、営業利益率も20%超と高く、隙が見当たらない。

 

(8) オンライン教育・・・21年度予想:快晴

新型コロナウイルス感染拡大に伴い発令された緊急事態宣言に合わせて、全国各地で臨時休校が相次ぎ、たまの登校日に先生から大量の宿題を手渡され、自宅で自習する日々が続いたようだ。本書によると、193月時点での小中学生へのパソコン配備率は2割弱にとどまるとのこと。個別最適化学習という観点から、オンライン教育の有用性は早くから指摘されていたにもかかわらず、システム整備は亀の歩みだ。文部科学省は20年度中に配備率100%を達成するGIGAスクール構想を掲げているが、大言壮語に聞こえてならない。デジタル後進国、日本の将来に、不安が募るばかりだ。

 

(9) 電子部品・・・21年度予想:快晴

これからの大本命業界その3。本書によると、当業界の日系メーカーの世界シェアは4割近いとのこと。ただし他業界と比べて株単価が高めの銘柄が多く、配当利回りもあまり良くないため、僕は今のところ投資は考えていない。

 

(10) 半導体製造装置・・・21年度予想:晴れ

ウェハー切断・研削・研磨装置で世界シェアトップの「ディスコ」は、僕が就活生だった頃から、トップシェアを堅持していた。恐らく製造ノウハウがモノを言い、先発メーカーの優位性が崩れにくい業界なのだろう。日本各社とも高い営業利益率をキープしている。中韓メーカーが台頭していない点も安心材料だ。しかし「東京エレクトロン」「レーザーテック」「アドバンテスト」「ディスコ」などの国内有力企業の株価は、数年前(2017年頃)の数倍に跳ね上がっており、今から投資するのは遅きに失した感がある。

 

(11) 半導体材料・・・21年度予想:晴れ

こちらも半導体製造装置業界同様、技術的障壁が高く、新規参入による価格破壊が起きにくいようだ。個人的にはビフォーコロナの水準に株価が戻っていない銘柄が押し目だと思う。具体的には「SUMCO」「AGC」「住友化学」などが該当する。ただ、いずれも株価は上げ下げを周期的に繰り返しており、明確に上向くまでは、相当な期間を要するだろう。

 

(12) eコマース・・・21年度予想:晴れ

ネット通販は週に1回以上の頻度で利用している。外出せず自宅で商品を探し注文し受け取るサービスは、とても便利だ。市場は安定かつ長期的に成長すると思う。僕は個人的に利用する機会が多い、「Zホールディングス」の株式を購入した。コロナショックの底値から株価はジワジワ上がり続け、既に2倍以上の値を付けているが、まだまだ上がると期待している。

 

(13) クラウド・・・21年度予想:快晴

これからの大本命業界その4。日本の有望企業の株価は、既にコロナショック前の水準を上回っており、業績不調な他業界から資金が流入していると思われる。来年以降に大規模な株価調整があると予想する。投資するなら12年様子を見てからでもいいと思う。

 

(14) 炭素繊維・・・21年度予想:雨

炭素繊維の将来性に期待している。大手航空会社が旅客機の減算を決定したため、最大手の「東レ」を中心に業績は落ち込みが確実視されているようだが、将来的にはロケットや人工衛星をはじめとする宇宙機器や空飛ぶ車などに採用が進んでいくと思う。特にリーディングカンパニーの「東レ」にはロマンを感じている。

 

(15) 広告・ネット広告・・・21年度予想:薄曇り

本書によると、インターネットの広告費は、ここ10年で2倍以上に増額しており、まだまだ伸長の余地がありそうだ。当業界は「電通グループ」と「博報堂DYホールディングス」の2強体制。どちらも株価はビフォーコロナの水準に戻しておらず、割安感があっていいと思うが、個人的には営業利益率の低さが気になる。僕は「Zホールディングス」のグループ会社「バリューコマース」に注目している。増収増益が続き、20%近い営業利益率を誇る。

 

(16) 倉庫・物流施設・・・21年度予想:快晴

これからの大本命業界その5。EC事業の成長に牽引される形で、倉庫面積の拡大や物流施設の新規供給傾向が持続しており、しばらく市場が冷えることはなさそうだ。業界トップランナーの「三井倉庫HD」を5月からチェックしていたのだが、買い時を逃した感は否めない。

 

(17) アウトドア用品・・・21年度予想:晴れ

昨年頃から「ワークマン」の進撃が話題となり、株価も急上昇したが、個人的には「ゴールドウイン」を推す。著名なブランドを多数保持しており、特に「ザ・ノースフェイス」の認知度は抜群だ。近所の中高生が担いでいる部活用バッグは、ほぼ「ザ・ノースフェイス」の独占状態にある。若者に選ばれるブランドで有り続ける限り、将来は安泰だと思う。

 

(18) 総合商社・・・21年度予想:曇り

商社マンは仕事が出来るサラリーマンの代表格(エリート)だと思っている。どれほど環境が悪くとも、適切なリスクヘッジで黒字を死守する強かさが、総合商社にはあると思う。仮に赤字で決着しても、翌年には復調する信頼感も抱いている。僕は株式投資を始めたばかりの頃に、単価が安かった「双日」を購入している。大手商社銘柄の株価は徐々に上昇しつつあるが、昨年末水準に未だ至らない銘柄が多い。中長期的に見れば、押し目買いのチャンスが続いていると思う。高配当銘柄が揃っているので、お守りにしているだけで、懐が温かくなるのも嬉しい。

 

(19) 警備・・・21年度予想:晴れ

リーディングカンパニーの「セコム」は、父がグループ会社に勤めていたため、思い入れがある。父曰く「セコムは新規事業を手広くやっているが潰した会社も数多い」とのこと。主力事業が好調なうちに、別の稼ぎ柱を貪欲に求める姿勢を、僕は評価したい。

 

(20) イベント・・・21年度予想:曇り

イベント業界は現在進行形で甚大なコロナショックを受けている。イベントの開催見送りや入場制限はしばらく続き、地域経済に及ぼす影響は非常に大きいと思う。言い換えると、経済復興(正常化)の目玉となるのは、イベント開催だと思う。イベント主催者並びに国及び地方自治体は、規模を縮小してでもイベントを開催し、消費を喚起していくはずである。イベント主催者は、イベントの規模を縮小して会場内消費が冷え込めば売上を落とすことになるが、イベントの企画・進行や会場制作を担当する業者にとっては受注が全てであり、イベント自体の売上がどうなろうと業績には関係が無い。僕は本書の見通しよりも早く、イベント業界は復調すると予想している。当業界の中では、株価が昨年末水準に戻っておらず、かつ低単価で購入しやすい、「TOW」「博展」に注目している。

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アベノミクス政策のツケを払うために、近い未来に長期の株価低迷が予想される中で、我々はどのように資産形成をしていくべきかを、提言した書籍である。全体を通して、同じようなことを、言い方を変えて何度も言及しており、内容の水増し感が強かった。十分に推敲していれば、半分ほどのページにまとめられたのではなかろうか。

以下では、本書の中でも特に印象に残った箇所を紹介し、所感を述べたい。なお文字数制限の都合で、前半と後半に分けて掲載する。当記事は後半にあたる。 

    GPIFの総資産は約160兆円。時価総額が660兆円程度の日本の株式市場では大きな存在と言える。

    この先、GPIFが資産を取り崩して、年金給付の財源に使うことが決まっている。GPIFが売り手に転じると、日本の株式市場には長期間下落圧力が加わる。

    しかしGPIFの資産は年金給付額の3年分程度に過ぎない。

    年金給付の財源の9割は、現役世代から徴収する保険料と国庫負担である。

    年金保険料率の引き上げ、消費税率の引き上げ、年金給付額の減額、年金支給開始年齢の引き上げなどにより、年金制度は延命されており、年金財政は既に破綻状況にあると言っても過言ではない。

GPIFが資産売却の意向を示し、株価が実際に下落すれば、投資家の不興を買うだけでは済まない。GPIFは独立行政法人だが、国民の税金を運用しているため、野党は自民党の責任を追及するだろうし、内閣支持率が低下し、下野する恐れもある。政権に忖度して、基本ポートフォリオを変更したと噂されているGPIFが、安倍総理在任中に売却方針に転換するとは考えにくいが、彼が任期を終えた後もGPIFを制御できるとは限らない。最悪のシナリオは、アベノミクス相場が崩壊して、株価低迷が深刻化し、海外企業による日本の有力企業買収が加速し、日本が誇る最先端技術が流出し、国力が衰えていくことだろう。

 

    過去20年間の国内株式と国内債券の相関係数は-0.16であり、弱いながらも値動きは逆に動くことが示されている。

いやいや-0.16は無相関だろう。著者の分析は統計的に正しいとは言えない。国内株式と国内債券は独立した値動きをすると判断すべきだ。相関を論じる前に、まずは理論的に正しいと思われる仮説を立てなければならない。因果関係の妥当性を検証しないまま相関関係を分析しても全く無意味である。「風が吹けば桶屋が儲かる」と、言っていることは同じだ。

 

    ドルコスト平均法による積立投資の最終的な収益は、ゴール時点の日経平均株価に大きく依存する。

投資の常識を56ページも費やして解説していたことに驚きを禁じ得ない。初心者が最初に始める投資は、税制優遇が手厚い確定拠出年金だと思う。確定拠出年金の公式ウェブサイトでは、若いうちは株式などのハイリスク・ハイリターンの金融商品を多めに購入し、年齢を重ねてゴールが近付いてきたら、定期預金などの元本保証商品に振り替えていくべきだとアドバイスしている。本書を手に取るほど金融リテラシーが高い人に、このような説法は全く無価値ではないだろうか。入口戦略と出口戦略を想定しておくことは、投資全般の基礎である。ドルコスト平均法による積立投資の長所は、ファンドを選びさえすれば、入口戦略(いつ、何を、どのくらい買うか)が機械的に決定されるため、都度考えるというコストを支払わなくても済む点だと思う。著者は皮肉を込めて「ドルコスト平均法は証券会社にとってノーベルセールストーク賞」と述べていたが、配当収入が信託報酬を下回ることはまず無いし、出口戦略(いつ、何を、どのくらい売るか)さえ誤らなければ、最終的に損失を出すリスクも低いと考えられるため、とりわけ初心者にとっては良い商品だと僕は思う。積立投資の一番の問題点は、出口戦略を自己責任で決めなければならないことは分かっていても、その判断の難しさを理解出来ていない投資家がいることだと思う。僕は、今年から自分で株式投資を始め、その難しさを痛感するようになった。確定拠出年金は、大きなリターンが期待できない元本保証商品は全く購入していないが、50歳頃から相場状況を見極めて、少しずつ利益確定を進めたいと考えている。妥当で後悔が少ない判断が出来るように、これからも株式投資を続けたいと考えている。

僕は全くの放置プレイだったが、一部の同僚は、コロナショックを察知して、いち早く株式を売却して利益確定したらしい。彼は、恐らく株価が一番底に達した3月半ば以降に、再び株式を買い直したのではないかと思う。例えば、日経平均株価が約18千円の頃に買い戻し、秋以降に再度の下落局面が来ると予想して、約23千円となった今、再度売却していたならば、半年足らずの間に約28%の売却益を得られた計算になる。羨ましい。僕も相場を先読みして大胆な投資行動へと移せるようになりたいものだ。

 

    GPIF20年かけて資産を取り崩すと仮定すると、国内株式を毎年2兆円ずつ売却することになり、穏やかな下げトレンドが長期間続くことを意味する。よって、ドルコスト平均法による資産形成を始めるのに、現在は必ずしも適した時期とは言えない。

日本人がもっと株式投資に参画するようになれば、GPIFの売りに対抗することは可能だと思う。日本人の金融資産に占める現預金の比率は5割を超えており、欧米諸国と比べて突出して高く、約1000兆円あると言われている。このうち半額の500兆円が株式市場に流れれば、GPIFの売りによる株安効果は相当薄まると考えられる。プレイヤーの増員には金融教育が非常に重要だと思う。社内で公表されていた企業型確定拠出年金運用レポートによると、年齢が高い社員ほど株式の資産割合が高いそうだ。年配の社員ほど株式投資の必要性を痛感しており、逆に若手社員は投資についての知識が絶望的に欠けているのだと思う。実は僕も社員を対象とした運用セミナーを受講するまでは、定期預金で100%運用しており、手数料無料で購入商品を簡単に変えられることや、加入者自ら掛金を増額する「マッチング拠出制度」があることも知らなかった。金融教育は社会人になってからでは遅過ぎる。学校教育の中で金融教育を積極的に取り上げ、子供たちに金融を身近なものとし、自主的に学び実践する方向へと導く工夫が必要だと思う。金融庁をはじめとする関係省庁には知恵を絞って頂きたい。

GPIFが全ての資産を売却してしまったら、その後の年金財源はどこから補うのだろうか。「財源のひとつが尽きましたから、来年度からは増税又は支給を減額します」などと言ったら、世代間の不公平感が強まり、国民からの不満が噴出し、政策を決定した内閣の支持率は急降下するに違いない。その時を先延ばししたい政府からの要請を受けて、GPIFは少しずつ売却ペースを落としていくと思われる。あるいは資産の取り崩し開始宣言後の株価動向を勘案し、政府が売却に待ったをかける可能性もあるだろう。是が非でも資産売却を断行するとは限らないと思う。

 

    リスクヘッジの手段として国際分散投資は選択肢のひとつとなる。しかし海外株式が堅調に推移したとしても、GPIFの売りが生み出す円高によって収益が帳消しにされるリスクがある。

    分散投資では、投資信託ではなく極力ETFを運用し、コストを下げることが重要。

    アクティブ運用の信託報酬はパッシブ運用より1%ほど高いが、GPIFのアクティブ運用による超過収益率は、直近10年間で平均0.46%に過ぎず、運用コストを下回っているため、オススメできない。

    既にマイナス利回りの債権が世界中に存在している。将来損失を生む可能性が高い債券に投資するのは避けた方が賢明と言えよう。

    今は貯金を中心としたポートフォリオにすることが有力な選択肢だと思う。

    本来、時間をかけて手に入れるべきリターンを、時間をかけずにFXや仮想通貨への投資によって短期間で得るというのは、ドーピングと同じ発想だ。

著者の意見を集約すると、「いかにして資産を増やすか」ではなく「いかにして資産を守るか」に軸足を置いているように見受けられた。少しでも資産を増やして、さっさとサラリーマンをリタイアしたい僕のような人種には、嬉しくない提案だった。

 

前半はこちら

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アベノミクス政策のツケを払うために、近い未来に長期の株価低迷が予想される中で、我々はどのように資産形成をしていくべきかを、提言した書籍である。全体を通して、同じようなことを、言い方を変えて何度も言及しており、内容の水増し感が強かった。十分に推敲していれば、半分ほどのページにまとめられたのではなかろうか。

以下では、本書の中でも特に印象に残った箇所を紹介し、所感を述べたい。なお文字数制限の都合で、前半と後半に分けて掲載する。当記事は前半にあたる。

 

    GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は基本ポートフォリオを変更し、国内及び海外株式の投資割合を約2倍に引き上げた。

    2013年の第一次黒田バズーカで、日銀は年間1兆円のETF購入方針を宣言し、次いで2014年の第二次黒田バズーカで、日銀はETF及びJ-REITの購入枠を年間3兆円に拡大した。

    外国人投資家は、2013年に151196億円もの買越を記録し、株高の原動力となった。

    一方、日本の個人投資家は、2013年に87508億円も売越を記録した。

本書に限らず、プロの経済アナリストの多くは、「外国人投資家は、官製相場に乗じて大量の日本株を買い、株価の上昇を見て売りに転じ、多額の利益を得ている」と論じているが、本当にそうだろうか。日本取引所グループの投資部門別売買状況に掲載されていた、株式年間売買状況を表にまとめてみた。売越とは、買った金額よりも売った金額の方が多い、ということである。2010年以降、日本の個人投資家は、東日本大震災が起こった2011年のみ、僅かに買越を記録したものの、それ以外は売越を続け、10年間の売越総額は352032億円に達している。日本の個人投資家の多くは、こまめに利益確定し、相場の状況によらず、着実に稼いでいると言えるのではないだろうか。一方の外国人投資家は、2018年のように巨額の売越を記録した年もあるが、10年間では142594億円もの買越である。外国人投資家の多くは、株価の低迷期だった2010年~2012年と上昇転換期の2013年の4年間で、計231290億円の買越を記録したが、その後は株式の売却を進めていると言えるのではないだろうか。つまり日本人の多くは短期売買戦略を取り、外国人の多くは中長期売買戦略を取っていると思われる。日本在住者は市況を肌で感じられるし、決算情報などの有益情報も集めやすいため、短期でも勝負できるが、外国人は情報を入手しづらく大局的にしか判断できないのだと思う。僕には良し悪しは判断できない。資産を増やせているならば、どちらでも構わないのではないかと思う。

外国人は、株価低迷期に購入した株を、2019年末時点では、まだ多数保有していたと思われる。外国人によって日本の株式相場を操縦されるという懸念も多少はあったと思うが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大を受けて、外国人投資家の売越が続いており、日本の株式市場からの撤収が加速していると思われる。株価が底を突いた20203月の売越は21891億円に及ぶことから、かなりの外国人投資家が保有株式を手放したと考えられる。恐らく乱降下のリスクが払拭されたとは言えない株式投資はリスキーと判断し、貴金属など別の投資商品に資金が流れているのではないだろうか。一方で、日本の個人投資家は、20203月に8454億円の買越を記録した。日本の個人投資家の多くは、新型コロナウイルスが駆逐されれば株価は戻ると信じ、パニック売りをせずに塩漬けを選択しただけでなく、株価の急落局面を好機と見て、買い増しを進めたと考えられる。僕のように新規参入した投資家によるマネーも増えたと思う。5月の売越に転じたのは一部を利益確定したからだろう。どちらも理に適った戦略だと思う。予期せぬパンデミックが呼び水となって、外国人投資家の影響力が弱まり、日本の個人投資家の勢力が拡大したことは、日本の株式市場にとっては幸いだったと思う。

 

個人

外国人

2010年合計

-22,771

32,105

2011年合計

59

19,725

2012年合計

-19,112

28,264

2013年合計

-87,508

151,196

2014年合計

-36,323

8,526

2015年合計

-49,995

-2,510

2016年合計

-31,624

-36,888

2017年合計

-57,934

7,532

2018年合計

-3,695

-57,403

2019年合計

-43,129

-7,953

10年間合計

-352,032

142,594

     ※金額の単位は億円。四捨五入。

 

個人

外国人

20201

6,665

-2,820

20202

1,530

-1,677

20203

8,454

-21,981

20204

5,599

-8,097

20205

-2,061

-1,947

20206

-91

-8,419

20207

2,504

-4,373

7ヶ月合計

22,600

-49,314

     ※金額の単位は億円。四捨五入。

 

後半に続く

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アフターコロナを見据えた経済関連書籍の発刊が相次いでいる。当書も、帯の煽り文句や裏表紙の内容紹介から、アフターコロナにフォーカスしたものだと思っていたが、実際は10年先20年先の日本を襲う脅威について、様々な切り口から広範に述べられていた。著者が語る未来は明るいとは言えないものだったが、決して大仰ではなく現実に起こり得ると感じられるもので、大変興味深かった。良書だと思う。

以下では、特に印象深かった記述を紹介し、個人的見解を述べたい。なお長過ぎて投稿出来なかったため、前半と後半に分けて投稿している。こちらは後半となる。


前半はこちら。

 


 

    AIの普及により、体力的に楽なホワイトカラーの仕事が世の中から消える一方で、介護、物流、建設といった、現状では不人気な仕事で人手不足が起きる。でもホワイトカラーからブルーカラーへの労働力の移動は簡単には起こせません。

高齢化率の高まりにより介護職の人手不足が深刻化するのは理解できるが、物流及び建設業界で人手不足が進むと言われてもピンと来ない。小売業におけるEC比率は現状1割にも満たない。今後ますます物流需要は増していくだろう。AIの普及によって物流業界が人手不足になるのではなく、AIの普及によって物流の担い手不足が相殺されるのではないかと思う。建設業は人海戦術のイメージが強い。AIによる省人化の期待効果は非常に大きく、加えて人口減少に起因する建設需要の縮小により、むしろ国内では人余りが発生し、海外市場に活路を求める企業が増えるのではないかと思う。すなわちホワイトカラーだけでなくブルーカラーの求人も全体で見れば減少していくと予想する。著者が指摘する通り、専門技能を必要とするブルーカラーと、専門技術を必要とするホワイトカラー間の人材移動は容易ではない。ほとんどの人達は、大学や専門学校で学んだ知識や、前職で身に付けたスキルを活かせる職種を求めるだろうから、数少ない働き口を奪い合う未来が想像できる。失業率は高止まりし、経済格差は更に広がるだろう。恐らく全国民を受給対象としたベーシックインカム制度が導入され、その財源とするために労働者の所得税率は大幅に引き上げられると見る。無職は低所得の中で家計を遣り繰りし、より豊かな生活をしたい人や働くことで遣り甲斐を感じたい人だけが、労働に従事する形に変わると予想する。

 

    周辺国の知識人や富裕層を対象に年間数万人規模の枠を設定して、2030年までに数十万人の若者の移民を促す政策は、日本の文化を変えずに日本の人口減少を抑える選択肢ではあるはずです。外国人労働者の拡充政策は、日本の未来を大きく左右する政策論点なのです。

同意見だが、問題は周辺国の知識人や富裕層の移民を促す方策だと思う。永続的な移民優遇策は財源の問題もあるが、何より不公平であり、人種対立の火種になり得るため、避けた方がよい。例えば、語学学習や職業訓練校や大学などの受講料を減額する、指定地域内ならば時限的に家賃補助を行う、無料の移民専用相談窓口を各所に設立するなど、サポート体制を整えることで移民の経済的ハードルを下げる政策が求められる。もちろん働き口の斡旋も必要だ。政府は、移民雇用促進法を制定して、大企業を対象に、一定割合以上の移民を雇うことを義務付け、違反した場合には処罰を与えればよい。

日本の人口が加速度的に減少していくことは共通認識になっていると思うが、その対策は育児支援に偏り、対策の有効性検証が不十分で、改良のスピードも遅いと感じる。迫りくる危機に対して目を逸らしている人がほとんどだと思う。日本の世界的地位は経済力によって支えられ、経済力は内需によって支えられ、内需は人口によって支えられている。人口減少は日本衰退のカウントダウンだ。移民政策は有望な解決策のひとつなのだから、著者が言う通り、より深い政策議論が必要だと思う。

 

    AIの先に待ち構えているのは日本人の大半が非正規労働者になる未来であり、正社員と中流家庭の消滅を意味する社会構造の変化です。そのことにより副次的に引き起こされるのが、高齢者になっても働き続けなければならない未来です。

国民全体の年収が下がり、いわゆる貧困層が主流になると、猛烈なデフレ圧力が加わり続ける。経済大国の地位から陥落し、労働環境や居住環境は悪化の一途を辿る。ゆくゆくは、中国やインドやベトナムなどのアジア各国に、安い労働力を提供する国に成り下がるのではないだろうか。個人的には韓国の動向に注目したい。北朝鮮との併合が成立せず、労働人口を獲得できなければ、韓国は日本よりも先行して国家存亡の危機に陥ると思う。恐らく韓国は中国の事実上の属国になることで、国家存続を果たそうとするのではないか。中国は対外的には周辺国を救済したという名目で、韓国の軍事力や技術力を手中に収めることができる。韓国国内に中国の軍事基地や工場を建設し、そこに韓国人を労働力として斡旋すると思われる。韓国人の間では不満が暴発するだろうが、圧倒的な国力で鎮圧され、結局は中国の言い成りになるだろう。国際社会は中国を非難するだけで、手出しはできないことは、香港の事例からも分かる通りだ。韓国で味を占めた中国は、続いて日本にも食指を動かすだろう。日本には、最先端の技術ノウハウや特許、漫画やアニメやゲームなど独自に発展したサブカルチャー、歴史的建造物や和食などの観光資源があるため、手に入れば中国にとってもメリットは大きい。しかしアメリカがそれを許すはずがない。日本がアメリカに救済を申し立て、アメリカがそれに応じる形で、アメリカと中国との間で日本の取り合いが始まる。第三国としてインドあたりが介入すると、事態は混沌化し、最終的には戦争が勃発するかもしれない。当事者である日本に、もはや為す術はない。個人で出来る自衛策は、今のうちに金融資産を築いておくことくらいしか無さそうに思う。

 

    3つの要素が同時に起きれば、自民党が崩れ野党のポピュリズム政権が誕生するような状況が2020年代のどこかで起きる。1つめの条件は安倍後継政権が失点を重ねること。2つめの条件は野党の対抗馬として、山本太郎代表、橋本徹さん、小池百合子都知事などのカリスマが立つこと。そして3つめの条件は、与党自民党が賛成できないアジェンダが国政選挙の争点となることです。具体的に言うと「NHK解体」がその最有力候補です。

山本太郎氏は胡散臭く感じる。とにかく現政権を批判し逆張りする共産党と同じ香りがする。政権を任せるには怖い存在だ。立花孝志氏は更に信頼できない。NHK解体以外の政策ビジョンが全く見えない。もっと理知的で仕事が出来そうな相棒、あるいは実績が豊富な元政治家や学者や経営者がブレインに加われば、大化けする可能性はあるかもしれないが、現状では多数派になるとは思えない。そもそも「NHK解体」などという、しょうもない公約が、国政選挙の争点になるとは思えない。

小池百合子氏には政治的信念を感じない。彼女に政権を任せると、民意を窺って言動をコロコロ変える、最悪なポピュリズム政治が行われ、日本全体が大混乱に陥るリスクがある。都知事になってから、目立った成果は挙げていないと思われるが、なぜか都民のウケ(支持率)は良いため、好機があれば国政に復帰すると思う。有力な野党あるいは他のポピュリズム政党と連立を組むことができれば、番狂わせを起こす可能性はありそうだ。

橋本徹氏は、著者が名前を挙げた中では、一番政治家としての資質を感じるが、国政に挑戦する様子は見られない。何らかの失態を犯して、自民党や公明党や立憲民主党から離党者が相次いだ時に、日本維新の会が受け皿となり、党勢を強めて第三党の立場を確立できれば、政策論議が深まるのではないかという期待はある。

日本人は、ドナルド・トランプ氏やポリス・ジョンソン氏やロドリゴ・ドゥテルテ氏やジャイロ・ボルソナロ氏などによる、ポピュリズム政権の振舞いを目の当たりにしているため、保守的な政党を選ぶ雰囲気が根強いと思う。安倍政権の独裁的な政治手法は目に余るものの、総裁が変われば政治も変わると期待して、結局は自民党の与党が続くと予想する。

 

    ビジネスモデル全体でみると反社会的不利益が出ているにもかかわらず、企業本体はクリーンであると主張できるビジネスモデルが増えています。ある飲食店口コミサイトでは、「有料サービスを購入すると点数が上がる」という営業をしていたことが複数の飲食店から証言され、社会問題になったのです。

食べログの口コミは飲食店選びでかなり参考にしているが、TOPページ記載の評価点は信用しないことにしている。口コミの評価点が低いものばかりでも、逆に高いものばかりでも、評価点は3点台前半に抑えられているケースが散見されるからだ。本書で興味を持ち、更に調べてみると、低評価の口コミが悉く削除されているお店も見つかった。恐らくお店側が申告して意図的に削除しているのだと思う。立地は悪くなくオープンから年月も経っているのに、口コミ数が極端に少ないお店は、地雷と判断した方が無難だと思う。

なおホットペッパーグルメの口コミは、掲載前に運営のチェックが入り、「投稿の内容が事実であっても店舗をオススメしているものでなければ掲載を差し控える」と、規約に明記している。すなわち批判的なレビューが掲載されることはない。このため劣悪なサービスを提供しているお店であっても、その事実が公表されることはなく、野放し状態となるが、掲載した飲食店情報サイト側に倫理的な問題はあっても、法律的な責任は問えない。一番信用できるのは友人の口コミなのだが、旅先の飲食店探しでは、飲食店情報サイトに頼るしかない。企業倫理を重視した理性的な経営方針に転換することを望みたい。

 

    全ての中国人がITでその信用度をレーティングされるようになって、みな法律やルールを守るいい人になっていったというのです。近未来のデジタルチャイナ型社会では、ゴミのポイ捨てや職場でのパワハラ歴、小売店や飲食店でのカスタマーハラスメントなどの非倫理的な行為が全て監視され、個人のスコアに反映されるようになります。日本では放置されているSNS上での有名人に対する誹謗中傷問題も、2020年代にはデジタルチャイナが解決策になる可能性は高いと思います。

監視されることを国民自身が望む社会は大変好ましくない。日本人は共同体意識が強く、他人の目を気にして行動を自制する国民性だと言われていたが、最近は自粛警察によって言動を半ば強制させられるケースが増えているように感じる。国家による監視も「仕方ないよね」と容易く受け入れてしまいそうで、恐ろしい。国家主導による強制力が強まると、民主主義国家とは言えなくなる。著者は官邸に人事権を握られて骨抜きにされた官僚を引き合いに出して、改めるべきだと主張していたが、国が個人や企業や組織をレーティングするようになれば、低評価による不利益を恐れた彼らは、自分で事の善悪を判断しなくなり、国の指針に盲従するようになるだろう。つまり日本人全員を政府(官邸)のイエスマンに変えることができる。政府が常に正しい行動を取り続けるとは限らない。暴走した政府に異を唱えることは国民の権利であり義務とも言えるが、政権批判すればレーティングが下がるのではないかと疑心暗鬼になると、国民からジャーナリズム精神が奪われて、アイヒマン化していくだろう。レーティング運用初期は内政の問題で済むかもしれないが、レーティングに飼い馴らされた若者達が、政治家や官僚や経営者になった時のことを想像すると、寒気がする。著者は国家による監視社会の到来を前向きな変化と評価しているようだが、僕はこのような悪法は断固認めてはならないと思う。

 

    トヨタの営業利益をゼロに設定すれば、年間の研究開発費を3.5兆円に引き上げることができます。未来自動車の開発としてはGAFAを上回る規模となります。しかし豊田章男社長はこの宣言を行うことができない。理由はトヨタに3.5兆円のお金を10年間使い続ける戦略がないからです。

    トヨタの保有するエンジニア人材は、巨大IT企業が自動車産業で成功するために喉から手が出るほど欲しい人材です。

    トヨタが未来を語るようになり、GAFAのような未来評価を受けることで株価が今の4倍になれば、トヨタはグーグルともアマゾンとも対等合併ができることになる。

トヨタ社長が豊田章男氏から代替わりした時がトヨタ衰退の決定打になりそうな気がする。一介のエンジニアである僕の目からも、トヨタに今必要なのは未来への投資、すなわち研究開発費の増額だと思う。リアルなモノづくり技術を強みにして、巨大IT企業との対等合併を目論むという発想は実に面白い。ただ、著者も指摘していたが、トヨタは全方位に投資して、何でも自分達でやりたがる文化がありそうなので、なかなかそういう大胆な方針転換はできないと思う。

 

    私が一番トヨタにやって欲しいのは中国の巨大IT企業との対等合併です。アリババトヨタないしはバイドゥトヨタの実現です。中国というとその政治体制から嫌悪感を示す日本人が多いことは知っています。企業というものは国家とは独立して存在しうるものです。中国の資本と一緒になるからといって、企業が国家に支配されるわけではないのです。

トヨタが中国のアリババやバイドゥと合併する未来は想像しづらい。著者は「企業は国家から独立していて、国家に支配されるわけではない」と述べているが、本当にそうだろうか。別書籍だが、こちらの一つ星のアマゾンレビューが参考になる。中国企業と同一資本になれば、中国共産党に情報が筒抜けとなり、言論や行動が統制される恐れは大いにある。日本及びアメリカ政府が黙って見過ごすはずがなく、合併を思い止まるよう、水面下で説得に当たるだろう。これを突っぱねて合併を成し遂げても、報道各社及び国民の多くから「反日企業」「売国企業」といった罵詈雑言が浴びせられることになりそうだ。アメリカのグーグルやアマゾンとの合併の方が、まだ現実味がある。個人的には、日本の小売業を制覇するには物流網の革新が不可欠と考えていそうなアマゾンが、前向きな姿勢を見せそうな気がする。

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アフターコロナを見据えた経済関連書籍の発刊が相次いでいる。当書も、帯の煽り文句や裏表紙の内容紹介から、アフターコロナにフォーカスしたものだと思っていたが、実際は10年先20年先の日本を襲う脅威について、様々な切り口から広範に述べられていた。著者が語る未来は明るいとは言えないものだったが、決して大仰ではなく現実に起こり得ると感じられるもので、大変興味深かった。良書だと思う。

以下では、特に印象深かった記述を紹介し、個人的見解を述べたい。なお長過ぎて投稿出来なかったため、前半と後半に分けて投稿している。こちらは前半となる。

 

    9月頃には航空業界、ホテル業界、観光バスや旅行会社、インバウンド向け小売業などの観光業界、イベント業界、飲食店、夜の歓楽街など幅広い業種で、コロナ倒産が相次いでいくはずです。

インバウンド需要に支えられて成長してきた業種の株は買い控えるのが無難だろう。上場している大企業が一社でもコロナによって倒産したら、不安に感じた投資家達が一斉に株を手放し、株価が大暴落する可能性は相当高そうだ。

 

    コロナ以後、世界中で出張需要が激減する可能性があります。産業でいえば、航空業界、ホテル業界、鉄道業界などがコロナ後も継続して大きな打撃を受ける可能性が出てきたわけです。

アフターコロナでもオンライン会議は定着し、上記の業界は確かに大打撃を受け続けるだろう。しかし、企業の立場からすると、出張費という無駄な経費を削減することができ、浮いた費用をより戦略的な投資に振り向けられるという、プラスの側面もある。

人口密集地からほど近い飲食店や公共交通事業者は地元住民に支えられ、超人気の観光地は消費が冷え込む中でも選ばれ続けて連鎖倒産を免れるが、多くの地域は永続的な不景気に悩まされ、存続が困難になると予想する。商業施設や病院などの社会インフラも撤退していき、過疎化が進み、自治体の消滅が早まり、スマートシティ化が加速するのではないだろうか。一連の変化は、大局的に見れば、1020年先に日本経済が力強く成長していく糧となる可能性がある。

 

    2014年に内閣人事局が創設されて、それまで各省庁のトップに任されていた省庁幹部約600人の人事権を、官邸が握るようになったことで、官僚が官邸の顔色を見ながら行動するようになりました。その結果、各省庁の官僚が指示待ちになり、創意工夫をもった政策立案をしなくなります。この仕組みが存続する限り、日本政府は指導者が入れ替わっても、未曾有の新しい脅威の下では、政権の愚策が続くと予言されるのです。

要するに安倍総理が日本の行政組織を骨抜きにしたということだ。かつての官僚は官邸を監視し、時には指針を正す役目を果たしていたのだと思うが、現在は官邸のイエスマンに成り下がってしまったようだ。自民党が自らの政策を顧みて失政を認めるとは考えづらい。仕組みを再度見直すためには政権交代が必須だろう。立憲民主党や日本維新の会などに奮起してもらいたいところだが、政党支持率や議席数で水をあけられており、可能性は極めて低い。政策の隔たりが大きいため、野党一同が結束して与党奪還に動く展開も望み薄だ。自民党の我が世の春は、まだまだ続きそうだ。「不満があっても自民党しか選択肢が無い」「どうせ自民党が勝つ」という状況が、国民の政治離れを加速していると思う。アメリカのような、二大政党制が根付けば良いのだが。

 

    トヨタのレクサスが500万円だとして、もしそれと同じ乗り心地のアイリスオーヤマの乗用車が100万円程度で、ドン・キホーテやヤマダ電機でも同様にPB商品の乗用車が80万円で売られるようになったら、みなさんはどちらが売れると思いますか。

同じ品質のモノが全く異なる価格で販売されるという前提に無理がある。高級時計やブランドバッグのように、レクサスが高級ブランドとして認知されるようになれば、価格が多少高くても、ステイタスを求める富裕層から選ばれ続けると思う。

 

    自動車産業が脱ガソリン車へと舵を切りEV化が時代の流れになってしまうと、雇用が失われてしまう。国家としての大問題です。もしトヨタが本気でCASEへと舵を切ろうとすると、そこに立ちはだかる最大の障壁は、恐らく政府と官僚ということになるでしょう。

トヨタをはじめとする日本の自動車産業がEV化の潮流に乗れず衰退すれば、更に多くの雇用が失われる。これこそ国難だ。日本政府や官僚も、それは認識していると思うが、結局、今現在の雇用を守ることに執着し、将来に向けた大胆な改革は断行できなさそうだ。日本の自動車メーカーは、国内の自社工場や関連会社の雇用を維持するため、薄利を承知のうえで、庶民向けに従来の自動車を生産し、安値での販売を続けるのではなかろうか。日本の交通インフラの水準は次第に下がり、現在の新興国と立場が逆転するのではないかと思う。

 

    都市の道路網を公平に使って都市物流を最適化するのもひとつの考え方ですが、一般道の道路網を一般レーンと高速レーンが混在するかのごとく制御することも2030年代のインフラ技術なら可能になります。

日本では、まず高速道路に完全自動運転車専用レーンを設け、長距離トラックや夜行バスなどを走らせることから始まりそうだ。人が運転する従来の自動車と完全自動運転車が混在している間は、一般道で上記の物流網を構築することは難しいだろう。従来の自動車は、新車の製造だけでなく中古車の販売も禁止し、車検も更新できないようにでもしない限り、全ての自動車がコネクテッドカーに置き換わるのは、何十年も先の話になるだろう。しかし、関連事業者の経済活動を著しく制限する法規制が、日本で罷り通る可能性は極めて低いと思われる。日本では、自動車向けの高速道路や一般道よりも、鉄道路線を利用した完全自動運転貨物列車の方が、先に実用化されそうな気がする。

 

    EV化が進めば、例えば郊外や農村部のEVユーザーとソーラーパネルを組み合わせて、新しいバーチャルな電力ネットワークを構築することが可能になります。

災害大国ニッポンでは、地方自治体が災害時の非常用電源兼移動手段として、EVを導入するという未来は有り得そうだ。地方自治体間を繋ぐ企業や組織が現れれば、旧来の電力網に依存しない形で、小規模な電力ネットワークが生まれる。通常時は、市役所や美術館などの市や町が管理する施設の補助電源に充ててもいいし、地元の企業に安く提供することで地場産業の振興に役立ててもいい。防災目的の公共投資という名目ならば角も立ちにくいため、国も補助金を与えやすいだろう。補助対象を国内メーカーのEVに限定すれば、自動車産業の雇用も守れて、いいこと尽くめだと思う。あるいは自動車メーカーがEVを安値でリースし、運用と保守を代行する手数料で儲けるという仕組みも考えられそうだ。

 

    完全自動運転技術が加われば、あなたが働いている間に、あなたの車は色々な場所でウーバーのユーザーを拾って目的地まで送り届けるようになります。そのように車にも仕事をさせることで、自分の車にお金を稼がせることができるようになります。

第二種免許という資格制度がある日本においてライドシェアが普及する未来は描きにくい。また相乗りに心理的抵抗感を持つ人は少なくないだろう。ただ完全自動運転技術が実用化されれば、運転手不在となるため、所有者が資格を持っていなくても、現行の法律で取り締まることは難しく、また保安面も改善されるため、人気に火が付く可能性は高いと思う。今はタクシー及びハイヤー業界が中心となりライドシェア導入に猛反発しているようだが、普及が進めば短距離の路線バスや鉄道の客も奪われることになる。その頃には、物流の担い手も大半が完全自動運転車に取って代わられ、多くのドライバーは失業を余儀なくされるだろう。

 

    トヨタの上級役員の方が私達コンサルタントに議論を持ち掛けたことがあります。何かに注力するのではなく、やるべきことすべてをきちんとやることでトヨタは成功している。他社が何かに注力してトヨタを追撃しようともトヨタは負ける気がしない。私達経営戦略コンサルタントがライバル会社の耳にどんなアイデアを囁こうともトヨタは怖くはない、という話でした。

成功体験に裏打ちされた王者の余裕は、見方を変えると、成功体験の過信による危機感の欠如とも考えられる。僕は自分達が負けるはずがないと思い込むことは大変危険だと思う。グーグルやアマゾンやアリババといった、トヨタを上回る巨大資本を持つ企業が、トヨタよりも優れたAI技術という新しい武器を携えて、市場の席巻を虎視眈々と狙っている現況は、楽観視できるものではない。トヨタが衰退すれば日本も衰退する。トヨタの強みであるモノづくり技術を生かしつつ、圧倒的に稼げる会社を目指し、これからも日本を力強く牽引して欲しいと願う。

 

    2006年に大きな話題を呼んだドキュメンタリー番組がありました。『気候大異変』という日米共同制作の番組です。巨大台風、集中豪雨、熱中症の増大など、近年問題になっている異常気象を先取りして予測したという点で非常に興味深い番組でした。

異常気象が日常化していくと、災害リスクの低さが重視されるようになり、河川、海岸、山林から離れた土地の人気が一層高まり、逆に土砂災害や冠水被害が頻発する土地は価値が下がるだろう。人口減少との相乗効果で、田舎の過疎化が急速に進行すると予想される。また武蔵小杉のタワーマンションでは停電や断水被害の影響により、トイレや地下駐車場が長期間使用できなくなり、世間の耳目を集めた。不動産価値も相当下落したようだ。一連の不祥事が相次げば、今後の都市開発の指針にも変化が現れるだろう。

環境問題解決は個人の努力よりも法整備や技術革新が決め手になると思う。ゆえに国のトップや国際機関に働き掛けることは理に適っていると思うが、グレタ氏のように感情を全面に出して訴える遣り方はスマートとは思えない。またグレタ氏は環境問題を語る時、まるで自分が哀れな被害者であるかのように主張する。自分が未成年(子供)であることを免罪符にして、大人達を責めているだけに見え、僕の心には響かなかった。環境破壊は、普通の人達が普通に生活しているだけで、進行してしまうものなのだから、たとえ未成年(子供)でも自分には責任が無いかのようにメッセージを発するのはどうかと思うし、対立を煽るよりも一致団結して対策を考える方が建設的だと思う。個人的には、10年後、もう子供とは言えない年齢になったグレタ氏が、どのようなメッセージを発するのか注目したいところだ。

 

    2040年頃までに、それぞれの地域で栽培される農作物について、それぞれの地域の気候が不適切な状態へと変わっていきます。青森県は今、リンゴの産地ですが、このまま気候変動が続くと、やがてミカンの産地に変わることがシミュレーション予想されています。

僕は日本の農業の未来は、さほど悲観していない。AIを中核とするスマートアグリにより、劣悪環境下でも安定して高品質な農作物を育てられる技術が各地に広まると期待している。人は食べないと生きていけない。食欲はヒトの本能であり、それを満たすことは幸福そのものである。エスカレートする気候変動と人口爆発の中で、農業の価値はますます高まるだろう。産業としての伸び代は非常に大きいため、将来的にはGAFAのような巨大企業が本格参入し、革新が起こる可能性もあると考えている。

 

    倉庫には商品が積まれている。コンピュータの在庫表上は商品があることは分かるのだけれど、それがどこに置いてあるのかが現場では簡単には分からなかったりします。従業員が一生懸命商品を見つけて発送するコストも、商品が結局見つからないことによる機会損失も、半端な金額ではない。

    逆に言えば、そこをカイゼンしていく企業は業績が上がります。小売の世界で言えば、アマゾン以外にも、ヨドバシ・ドット・コムが都心部であれば翌日中に配送できる速度の配送ネットワークを築いて成功しています。

僕が勤めている会社はメーカー直販のB to B商品を取り扱っている。個人向け小売店に比べれば製品の種類は決して多くはないはずだが、進捗や在庫の管理は人に頼っている。海外調達品の場合、発送日を目標に、荷物の開梱と検査日程をハンドリングしているが、その仕事は大変アナログでムダが多い。例えば、どの海外調達品を倉庫から社内にいつ引き込むのか、どの順番で開梱するのかなどは、担当スタッフが勘コツで実行している。それが本当に最適な動線なのかは誰にも分からず検証もできていない。またモノが入荷したことは分かっていても、それがどこにあるのかは現場で探してみないと分からない。お目当てのモノが見つかったら、次に探す手間を省くために、お手製のメモを現物に貼り付けて目立たせる。負荷の平準化が十分にできていないため、現場にモノが溢れて作業ができなくなり、新たに倉庫を借りてかわしたり、作業場を借りて検査員を出張させたりしている。ベテラン社員に話を聞くと、仕事の進め方は20年前から基本的に変わっていないそうだ。こうした物流のムダを削減できていないから、いつまで経っても赤字経営から抜け出せないのではないかと思う。

僕は、国内ナンバーワンの物流網を有するネット小売業者は、アマゾンではなくヨドバシ・ドット・コムだと考えている。アマゾンは年間4,900円を支払いプライム会員にならなければ、一定額以上購入しない限り配送料が無料にならないばかりか、日時の指定すら無料ではできないが、ヨドバシは無料会員登録すれば、たとえ100円未満の蛍光マーカー1本であったとしても、配送料は無料となる。つまりアマゾンですら無条件では実現できていないことを、ヨドバシは実現している。本当に凄い企業だと思う。ただしヨドバシは人気商品がたちまち品薄となり入荷未定の販売休止に陥るきらいがある。品数も在庫量もアマゾンには遠く及ばない。需要に見合うほど企業の規模拡大が進んでいない印象だ。少し勿体ない気もするが、下手に業績を追い求めて、顧客サービスの質を損ねるよりは、身の丈に合った経営をした方が良いという経営判断なのだと思う。

 

    家族のためにビールや靴下や肌着を補充するとか、プリンタ用紙やインクカートリッジが切れて買わなければいけないといった買い物が送料無料になると、外に買いに行くのが面倒なこともあり、アマゾンプライム会員にとってはアマゾン需要にシフトします。ホームセンター、ドラッグストア、GMSといった小売りチェーンストアの基礎的な売上を削り取るように奪っていきます。

著者は送料無料を過大評価しているように思う。アメリカでは買い物のたびに車を走らせなければならない地域が多いだろうが、日本では一部の田舎を除き徒歩圏内に日用品を買えるお店があるため、送料無料の価値はそれほど高くない。年間4,900円の会費をペイするほど送料無料を活用する人は、ほとんどいないのではなかろうか。プライム会員の最大の魅力は、送料無料ではなくプライム・ビデオ(定額見放題の動画配信サービス)だと思う。僕もお気に入りのドラマを見逃したことがきっかけで、1年だけ会員になったことがある。最安級の会費で、幅広いジャンルを取り揃えているが、逆に言うと特定のジャンルを好む人には全くオススメできない。また見放題作品と有料レンタル作品の入れ替わりが激しく、何がいつ入れ替わるのか事前に確認しづらい点は、すぐに改めるべきだと思う。

アマゾンの品揃えは大変素晴らしいが、価格は割高なものもかなりある。洗剤やトイレットペーパーや文房具などの日用消耗品や飲料品は、概ね高いと感じる。これらは著者が楽しくない買い物の一例に挙げている品々である。日本人は、少しでもお得に買えるならば多少の面倒は厭わない倹約家が、かなり多いと思う。通販の利点は他店との価格比較が容易に行える所にある。多くの日本人は、アマゾンが割高だと感じたら、アマゾン以外のECサイトの価格も調べて、より安いショップで買おうとすると思う。通販よりも実店舗の販売価格の方が安い場合は、実店舗に足を運ぶだろう。プライム会員はアマゾンでの購入にシフトしていくという著者の理屈は理解できない。

アマゾンに不足しているのはヘビーユーザーの優遇サービスだと思う。例えば、月間の購入金額に応じて翌月のアマゾンポイントの還元率を高めるといった、購買意欲を促すキャンペーンをリリースすれば、ヘビーユーザーは更に増えるのではないだろうか。日本人はポイントが大好きだと思う。アマゾンが、国や地域の嗜好に合わせた魅力的なサービスを始めた時、アマゾンエフェクトによる小売業の壊滅が始まるだろう。

 

    プライム・ビデオを使うようになると、週1回の放送に合わせてドラマを観るのが、だんだんつらくなってくる。ワンクール13話を続けて観る方が楽しいことが分かってきます。

    アマゾンプライムで我慢できなくなると、月額1000円程度で楽しめるネットフリックスやHuluといった有料ダウンロードサービスを使うようになります。

著者とは感性が合わない。僕はアニメを頻繁に録画視聴している。毎週視聴していると、次の放送が待ち遠しくなり、早く一週間が過ぎて欲しいと願うようになるが、この時間は決してつらいものではない。アニメファンサイトのコメント欄やツイッター実況民と感想を共有すれば、面白さは増していく。気に入った作品だと、復習と称して、次回放送までに23度と視聴を繰り返すこともある。アニメで作品の魅力に気付き、原作の漫画や小説を購入することもある。もっと制作者を応援したくなり、Blu-rayソフトやファンブックなどのコレクターズアイテムを購入することもある。僕は「この作品は観終わったから、次はこの作品を観よう」と、簡単に頭を切り替えたりせず、しばらく余韻に浸りたいタイプだ。

プライム・ビデオは総花的なラインナップなので、物足りなくなる気持ちは分かる。僕もプライム・ビデオは1年で見限り、dアニメストアに乗り換えている。著者は、プライム会員は継続しつつ別の動画配信サービスにも手を広げるようになると言いたいようだが、別の動画配信サービスを契約すると決めたら、プライム会員は脱退すると思う。家計は無限ではない。動画配信に限った話ではないが、新規で契約を結ぶ前に、本当に月額料金を支払う価値があるか、慎重に検討するはずだ。人によっては、月額料金の高さが許せず、プライム・ビデオで妥協する人も多いと思う。もちろん安易に有償レンタルサービスを利用することもない。興味がある作品だとしても、特価セールやキャンペーンの開催まで待つか、無料配信作品に切り替わるまで待つだろう。欲しいものがあれば価格は気にせずすぐに買う著者は、紛れもなく富裕層だ。僕とは金銭感覚がまるで違う。

 

    アマゾンが無人コンビニ「アマゾンゴー」で日本のコンビニ市場に参入する場合、ファミリーマートかローソンを買収します。それは10年後の日本のコンビニ地図が塗り替わることを意味します。

アマゾンによる買収劇は確かに有り得そうだが、果たして約15千店のオペレーションをアマゾン流へと一気に改革できるだろうか。全店舗を無人化(正確には省人化)するまで2年はかかると見る。またアマゾンゴーが日本で本格攻勢を仕掛ける頃には、日本のコンビニ大手も無人コンビニを拡大していると思う。そうするとアマゾンゴーは運営形態で差別化ができなくなる。ただし、アマゾンが自社倉庫で培った物流ノウハウは、コンビニのオペレーションにも生かせるはずなので、同業他社よりも設備投資と人件費を安く抑えることができ、多額の商品開発費を準備できるだろう。日本でセブンイレブンが圧倒的首位を確立しているのは、PB商品、特におにぎり、パン、総菜、冷凍食品、ホットスナックなどの食料品に強みがあるからだと思う。つまり商品開発力が同業他社よりも優れているからだ。アマゾンゴーがブランドイメージを高め、ユーザーから選ばれる存在になるためには、魅力的なPB商品の開発が決め手になるだろう。


後半に続く。

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著者の菅原潮氏は、定期購読している経済誌「プレジデント」の連載陣の中でも、とりわけ異彩を放っている。アフターコロナを迎える中で、僕のような初心者のド素人投資家はどのように振舞うべきか思索を深めるため、本書を手に取ることとした。

以下では、特に印象深かった記述を紹介し、個人的見解を述べたい。

 

    戦争のリスクが高まるほどの状況にあっても成長する産業、業種はある。解雇や倒産を待つのではなく、生き残れる環境を選ぶこと(転職)こそ、将来の自分に対する投資に他ならない。

 

経済活動が力強さを失い、不景気の到来に戦々恐々としている今、転職活動を始めるのが本当に合理的だろうか。企業の多くは「今は耐える時」と腹を括り、門戸を狭めており、正社員採用などの好待遇案件は、なかなか見つからないと思われる。今は現在の仕事で実務経験を積みつつ、英会話など潰しが効くスキルの向上や、仕事の幅を広げたり専門性を高めたりできる資格取得に挑戦するなど、自分の価値を高めるために努力すべきではないかと思う。

僕は、給与が低い関連会社へ移籍を打診されたり、遠方に転勤の辞令が下ったりしない限り、今の会社を辞めることは全く考えていない。大企業の正社員でも転職は珍しくなくなったが、サラリーは大抵下がることになる。よほど強い転職の動機が無い限り、今の仕事を続ける方が賢明だと思う。

 

    SNSでは、「新型コロナは怖くない」と繰り返す匿名医師が反響を呼んだ。ツイッターアカウントの分析により、匿名医師の一部が中国系企業に投資していることが分かった。日本で死者が出た直後、匿名医師達はアカウントを消して逃亡した。

 

TwitterFacebookもしていないので、匿名医師が暗躍していたなんて全く知らなかった。トイレットペーパ-が品切れ続出した時も不思議でならなかった。この手の話を聞いてもなお、SNSをやる人達の気持ちがよく分からない。娯楽として楽しむ分には良いと思うが、信頼できる情報源として活用するには無理があると思う。

そもそも「コロナなんて怖くない」などと発言していた著名人がいただろうか。プレジデント連載陣をはじめとする著名人は、早い段階から新型コロナウイルスの流行により社会構造は根本的に変革を迫られると予言していた。僕自身は、SARSMERSや鳥インフルエンザと同様に、新型コロナウイルスも自分には無関係なニュースだと楽観視していた。こうした情報感度の低さが、自分と有識者の格の違いなのかな、と思う。

 

    新規参入してきた個人投資家に伝えたいのは、誰かの犠牲を利用してもマネーを増やすのが投資家の素顔だという点だ。マネーの世界で生き残りたければ、自身の非情を抱えて人生を送るだけのタフさがなければならない。

 

誠にその通りだと思う。実際、次の買い場を迎えるために、僕はコロナの第二波到来を待ちわびている。多数の感染者や死者が相次ぐだろうし、もしかしたら家族や知人や自分自身が感染する可能性だってある。自分がお金を稼ぐために、誰かの不幸を願うのは、非人道的だ。本書を読んで、そのことに気付かされた。

それでも僕は投資を続けたい。別に荒稼ぎをしたいわけではない。不景気が長期化・深刻化すれば、来年度以降の給与・賞与に悪影響を及ぼす恐れがある。その損失分をいくらか補填したいと考えるのは、そんなに悪いことだろうか。お金を稼げば財布の紐も緩む。株式投資を志してから、関連書籍を購入する機会は格段に増えた。来年以降は、趣味の旅行も再開するつもりだ。合法的に稼いで、使う分には、何の問題も無いと思う。

 

    内部留保に課税し、人件費や設備投資、あるいは金融投資に使用した分は低減する仕組みの方が、中間層の可処分所得が増加し、消費が増えるという観点から好ましい。

 

内部留保課税の問題点については、201712月発行の第一生命経済研レポートに詳述されている。内部留保は金融資産だけでなく現物資産も含む。すなわち設備投資も課税対象となるため、設備投資(消費)を促進させる動機づけにはならない。また現預金は負債が増えた場合でも増額される。つまり現預金に課税すると、銀行などから現金を借り入れて投資(消費)に回すという発想を抑止してしまう。ゆえに消費喚起策として内部留保に課税するのはナンセンスであり、設備投資額の一部に補助金を出す(税金を還付する)方が、遥かに有効と考えられる。

また内部留保課税は賃上げの動機にも成り得ない。例えば、内部留保1千万円、年間税率10%、従業員10名、賞与ゼロのケースを考える。月額一律千円の賃上げを行えば、会社が従業員に支払う給与は年間12万円増え、内部留保税は988千円となり、内部留保は合計1108千円消える。賃上げを行わなければ、内部留保税は100万円となる。つまり将来に備えて貯蓄を増やすことを優先するならば、賃上げを見送るという判断に落ち着くだろう。

そもそも論になってしまうが、著者が提案する、人件費や設備投資費や金融投資費を除外することは、現実的に可能だろうか。課税の仕組みが複雑化することは間違いない。上場企業や大企業ならば対応可能かもしれないが、中小企業がそこまで細かく財務会計を作成できるとは思えない。また内部留保課税は、財務基盤が脆弱で、実質的に自転車操業状態となっている零細企業が有利となり、公平性に欠けるという問題点もある。大企業の多くは、多額の内部留保を保有しているが、これは雇用や株主の利益を守るための原資である。大企業であったとしても、特別損失などで赤字に転落することは珍しくない。一時的に赤字が膨らんでも、十分な内部留保があれば、倒産を免れることができる。しかし、内部留保に課税することになれば、赤字だろうがお構いなしに運転資金が税金として奪われるため、倒産のリスクは高まる。大企業が倒産すれば、取引先を含め多くの人が路頭に迷うだろう。

真っ当に堅実な経営をしている大企業から金を毟り取る内部留保課税論を、僕は支持しない。

 

    AIIB(アジアインフラ投資銀行)とは、中国共産党が運営する国家ヤミ金だ。中国は融資が焦げ付いた国から海洋拠点を合法的に収奪し、これまでにギリシャのピレウス港、スペインのバレンシア港、スリランカのハンバントタ港などを手中に収めている。

 

中国がアジアだけでなくヨーロッパの主要海洋拠点をも収奪していたとは、知らなかった。こうした中国の金に物を言わせた強引な手口は、日本国内ではあまり報道されていないように思う。アメリカとの貿易戦争ばかりがフォーカスされ、これが隠れ蓑にされている印象だ。中国は自らが覇権国家に成り上がるために野心的な戦略をいくつも取り、着実に成果を挙げている。そうした事実を偏向なくありのままに報道する姿勢が日本のマスメディアには欠けていると思う。

 

    トランプ氏は中国への「賠償請求」というカードを持ったことになる。従わなければ「資産凍結」「米国債無効化」という宣戦布告へとステージは上がるだろう。

 

仮にアメリカと中国が武力衝突のステージに移行したとして、一般人である僕達に一体何が出来るだろうか。親米路線を鮮明にしている日本が戦渦に巻き込まれることは避けようがない。市井の人達に出来ることといえば、穏便に事が収まるように、せいぜい祈るくらいだろう。新型コロナウイルス感染拡大も然りだが、一個人ではどうしようもないリスクは、考えるだけ無駄ではないか。我々は流れに身を任せるしかないと思う。

常識的に考えると、コロナ拡大の主要因は中国政府とWHOの初期対応のまずさにあるが、中国とWHOはこれを断固として認めず、あまつさえ責任転嫁に走っている。中国の本性が大々的に露見したことで、嫌中思想が世界中に広がっている。中国がこれまで通り莫大な金と暴力を背景にナショナリズムを強力に推し進めたとしても、どれだけの国々が賛同するだろうか。世界から孤立するリスクを抱えてまで、実利主義の中国が、敗色濃厚と思われる中で、開戦に踏み切るだろうか。可能性は非常に低いと思う。

 

    47日に安倍政権が閣議決定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策について」では、「我が国に供給する製品・部素材で、一国依存度が高いものについて、ASEAN諸国等への生産設備の多元化を支援する」と明言されている。43日のナヴァロ氏による「戦略物資生産の米国内回帰」発言との連動から考えれば、アメリカは日本と「ブロック経済」を形成する強い意思を持っていて、日本がそれに応じたとして私には思えない。

 

世界の中で一早くチャイナリスクを実感した日本の製造業は、かなり前から脱中国を進めている。新型コロナウイルスにより、中国からの製品・部素材供給が断たれ、混乱に陥ったのは厳然たる事実だ。僕が勤めている会社もそうだった。「ASEAN諸国等への生産設備の多元化」は、製造業の悲願である。国家的支援の明文化を疎ましく思う人は誰一人いないだろう。つまり、この閣議決定は、日本の有権者に対する政治的パフォーマンスの意味合いが強い。アメリカも同様だと思う。時期的符合を以て、日米ブロック経済の構築に応じたと判断するのは、こじつけに思える。

 

    企業自体がきちんとしている限り、下がった株価は必ず上がる。むしろ株価が下がることは、それ以上に株価が上がるための予備動作だ。そんなことより企業が本質的に持っている「魅力」と、それを感じ取る「感性」、その後の「理性的・合理的な分析」のスキルを磨くことが重要だ。

 

たぶん本書を読んでいる人の多くは上記を理解していて、「感性」や「理性的・合理的な分析」スキルを身に付けるための方法論を求めていたのではないかと思う。テスラ株購入を巡る一連の経験談を語っていたが、資金力も人脈も乏しい一般人には、あまり参考にならなさそうだった。

 

    私は日常を「淡々」と送ることに努めている。私はこれを「ルーティーン」と呼んでいる。この30年間、私の体重はプラスマイナス1kgを維持しており、ウエストは1cmも太らせていない。そのために食事や生活習慣を常に調整している。

 

30歳を過ぎたあたりから、下半身が太り始め、Lサイズのズボンが通らなくなった僕には、狂気すら感じる行為だ。僕は、自分の肉体の変化を見ることで時の流れを感じられるし、良くも悪くも自分が変わっていくことを面白く感じるが、著者は自分が変わらないことを確認して安心感を得ているようだ。僕とは全く異なる価値観だが、投資のプロとして成功を収めるには、それくらいの覚悟が必要だということだろう。

 

    現在、AIはナノ秒で判断し、ミリ秒の売買を実行する。大部分の個人投資家は求める利益を先回りして食い荒らされてしまう。個人投資家が追求しなければならないのは、中長期でのリターンを求める「王道の投資」ということになる。

 

面白みのない結論、というのが正直な感想だ。デイトレーダーになりたい、あるいはなれると信じている個人投資家なんて、ほんの一握りだと思う。これと決めた株式を購入したら、あとは株価が上がるまで辛抱強く待つ。ほとんどの個人投資家は、そういうスタンスで臨んでいると思う。

 

    現在では就業人口が他の産業に比べて少ない農業や漁業など食物の生産に関する産業は成長産業となる。いち早く就職先や転職先をこうした産業に求めるのは、人生に対する「投資」といえるだろう。

 

第一次産業は、この先どんな変化が訪れようとも、ニーズが途絶えることはない、不滅の産業だと思われ、世界的な人口増加や異常気象による環境の劣後を背景に、成長していく余地は確かにあるだろう。しかし成長産業だからといって勝ち馬に乗れるとは限らない。成長産業にはライバルが多数いる。競争に負けて憂き目を見る可能性だって大いにある。僕は、成長産業か否かではなく、自分の経験やスキルを活かせて、なおかつ遣り甲斐を感じられる仕事を探すべきではないかと思う。

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202059日の当ブログ記事でも紹介した、Dアトキンソン氏の短期集中連載「このピンチが最後のチャンスだ」では、統計データの分析に基づき、日本が飛躍的経済成長を遂げるためには、中小企業の統廃合がカギになるという大変興味深い提案をしていた。同年612日発売のプレジデントで最終回を迎えたと思われるため、当連載の要旨と感想を述べたい。

 

【第一回】

    日本の生産性は世界第28位、先進国では最低クラスだが、足を引っ張っているのは中小企業だ。

    労働者数と生産性は非常に強い相関を示す。中小企業の生産性は、大企業の半分ほどしかない。

    日本では小規模事業者が全体の84.9%も占める。1社あたりの従業員数は僅か3.4人である。

    小規模事業者は、人的リソースに余裕が無いため、有給休暇の取得が難しい。同様に産休・育休を取りづらいため、女性を積極的に登用できない。

    売上が小さい小規模事業者は、研究開発や設備投資に回せる資金が少なく、イノベーションを生み出せない。

    小規模事業者の多くは、統計上、実効税率ゼロ。慢性的な赤字企業は、ただの寄生虫。

    小規模事業者に補助金を出して延命させる必要はない。消えてもらった方がいい。

 

【第二回】

    日本の人材評価は、人口の多い先進国の中で最高レベルにあるが、最低賃金は最低水準にとどまる。

    最低賃金を欧州並みに引き上げれば、モノやサービスがよく売れて、経済への直接的なプラス効果が期待できる。

    最低賃金と生産性の間には強い正の相関が見られる。因果関係の有無は結論が出ていないが、多くの国がまず最低賃金を上げることで生産性を高めようとしている。

    最低賃金の引き上げによって経営難に陥るような会社は退場してもらった方が日本のためだ。それこそが最低賃金を引き上げる狙いと言える。

    日本の企業数は約360万社ある。人口に対してこの企業数は明らかに多過ぎる。半分以下でいい。

    日本は現在、最低賃金を年率3%程度引き上げているが、私は年率5%引き上げても全く問題ないと見ている。

 

【第三回】

    2060年までに、アメリカは人口が25.2%増えて、日本を除くG714.9%増える。それに対して日本は32.1%減少するため、強いデフレ圧力にさらされる。

    人口増の時は不動産が不足してインフレになるが、しばらくすると不動産が増えてインフレ圧力が弱まる。一方、人口減の時は余った不動産がそのまま残り続けデフレ圧力をかけ続ける。

    「いいものを安く売っている」というのは日本人の妄想だと思う。あくまでも「値段の割に頑張っている」だけで、トップクラスの争いで勝てるかどうかは疑問だ。この妄想から抜け出せない限り、日本は本当に高付加価値のものを生み出せず、企業の生産性は低いままで、人口減の時代に成長することは不可能だ。

    日本には能力の低い経営者が多過ぎる。日本の企業数は約360万社。その気になれば誰でも社長になれる。お金や人といった経営資源は、上位の優秀な経営者の元に集めて活用させるべきだ。

    中小企業庁は、未だに中小企業に対し、税制や補助金などで手厚い優遇策を続けている。中小企業が規模を拡大したくなるように成長を促して、それが出来ない企業には補助しない。そうした政策に切り替えない限り、日本の未来は無いと思う。

 

1社あたりの従業員数は僅か3.4人」ということは、大半の中小企業は家族経営であり、実質的には雇用を生み出せていないと思われる。補助金ありきで自転車操業しているような会社は、社会のお荷物なので、廃業してもらった方が日本のためになると、僕も思う。中小企業には、誰もやりたがらないが誰かがやらないといけない仕事や、高度な固有技術を必要とするニッチな仕事の受け皿になって欲しい。大企業の下請けにすらなれない企業には存在価値が無いと思う。

ブラック企業として報道されるのは名の知れた大企業ばかりだが、ネットの書き込みなどを見ていると、本当のブラック企業は中小企業に数多く存在していると思う。実際に働いてみると、大企業は法令遵守の意識が非常に高く、何か問題が起こった時には労使一体となって速やかに対策を講じる、高い即応性と柔軟性があると実感する。大企業には従業員の労働環境や福利厚生を改善する経済的な余裕があり、社会的責任感が強く、自浄作用が働きやすい。一方、中小企業の多くは労働組合が結成されておらず、社長が圧倒的な権限を持っている。つまり社長がその気にならなければ労働環境は改善されない。僕の兄が勤めていた会社は、週休1日制で残業も多く有休も取れずという過酷な働き方を従業員に強いており、兄は数年後に身体を壊して入院してしまった。幸い命に別状は無く、数ヶ月の療養後に復職を果たし、今はその会社の元従業員が設立した新会社に移籍し、元気に働いているようだ。兄の健康を脅かした会社は今も存続している。創業間もないベンチャー企業に対する優遇は必要だと思うが、従業員の生活を担保にしないと業績を伸ばせないようなクソ会社は淘汰されるべきだと思う。

小中学校のクラスの平均人数は25人前後らしい。つまり2クラスあれば1人以上は社長になれる計算だ。よく、日本人は起業意欲が低いとか、日本人は起業家が少ないとか言われているが、なぜ企業数はこんなにも多いのだろうか。日本は他の先進諸国と比べて新興企業が生き延びやすい環境にあり、本来は廃業が妥当な企業が生き延びてしまっているのではないだろうか。2019年版中小企業白書によると、倒産件数は2009年以来10年連続で減少し、2018年は僅か8,235件に留まる一方で、経営者の高齢化や後継者不在のために休業・解散した企業数は増加傾向にあり、2018年は47,724件にのぼるそうだ。また企業数は年々減少傾向にあり、1999年比で2016年は26%減少しており、特に小規模事業者は数を減らしているそうだ。Dアトキンソン氏は、この流れを更に加速させるべきだと言いたいのだろう。僕も同感だ。

最低賃金と生産性の話は眉唾だが、最低賃金の引き上げが経済活性化につながるという主張は頷ける。賃金が低いから、安くしないとモノが売れなくなり、インフレにならない。とにかく安くモノを作ろうとするから、本当にいいものが作られなくなる。僕が勤めている会社で担当している製品も、先進諸国では思うように拡販できていない。市場価格よりも数割高いからだと言われるが、品質が認められているならば多少高くても売れるはずだし、本当に高い技術を持っているならば安く作ることもできるはずだ。ボリュームゾーンは世界の大手級に奪われ、要求仕様が特殊なものや、短納期のものや、リプレイス案件などを受注して売上を確保しているが、赤字経営からは脱却できていない。まずは自分達が井の中の蛙であることを認め、過大評価を止め、技術力を高める施策に全力を注ぐべきだと思うが、現実は研究開発費を打ち切るなど、全く逆方向に舵を切っている。将来が非常に不安だ。

日本では、大企業がやたらと目の敵にされ、大企業優遇政策は愚策のような扱いを受けがちだが、世界で戦える企業を育てるためには、むしろ大企業を優遇する必要があると思う。特に日本は人口の急減に伴う内需の激減が確実視されており、経済成長を続けるには海外市場に活路を見出すしかない。大企業に資本集中することは非常に理に適っていると思う。中小企業、特に小規模事業者には、日本が飛躍的発展を遂げるための踏み台になってもらうしかないだろう。

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